糖尿病診断基準が2010年5月に改定されたことをご存じですか? 私は内科医で、糖尿病の患者さまを診療する機会が多くあります。この機会に、昨年改定された新しい糖尿病の診断基準に照らし合わせ、特定検診の結果の見方についてお話しさせていただきたいと思います。
まず、特定検診の結果を数年分集めてみてください。その結果から、血糖値とHbA1cに注目してください。ポイントは(1)空腹時血糖値126mg/dL以上(2)随時血糖値(空腹で採血した以外の血糖値)200mg/dL以上(3)HbA1c6・1%以上という基準値を超えているかどうかです。
数年分の検診の検査結果の中から(1)か(2)の結果が二つあれば、あなたは糖尿病です。もし(1)か(2)が一つでも(3)が一つあれば、やはり糖尿病の診断になります。
数年前に「あなたは、糖尿病かもしれませんね」と言われた結果が、今回の改定で糖尿病と診断することが数多くあります。
診察室では「血糖の検査結果がほんの少し診断基準値より低いから、糖尿病は大丈夫でしょ?」とおっしゃる患者さまがいます。狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などの動脈硬化による疾患は、正常から少し高い血糖値が続くことで、発症が増えていることが分かっています。
最近糖尿病の診断を受ける前に、糖尿病性網膜症の診断を受けた患者さまがいました。このような場合は特別な例として糖尿病と診断されるのですが、血糖値が正常値を超えていたら「糖尿病の診断の数値に少し足りないから、大丈夫」なんて言えないことを、あらためて経験しました。
企業が行っている検診では、HbA1cが測定されていないこともあります。血糖値が正常から少しでも高くなっていたら、かかりつけの医師にHbA1cの測定をお願いしてみては、いかがでしょうか。
市町村から皆さんに送られる特定検診の案内は、狭心症・心筋梗塞・脳梗塞の予防につながる重要な案内です。今年も特定検診を受けて、健康管理をお願いします。よりよい人生を送るためには、病気になる前からの対策が重要です。