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脳卒中集中治療室(2011年7月12日掲載)

伊泊 広二・沖縄協同病院

専門班が治療、リハビリ

突然「手足がしびれたり、動かなくなる」「しゃべれなくなる」などの症状で発症する脳卒中(脳梗塞や脳出血、くも膜下出血)は、寝たきりや介護が必要となる原因疾患の第1位です。今回は、脳卒中に患った方々を少しでも早く改善させるようにと、2006年に特別治療室として認められたSCU(Stroke care unit 脳卒中集中治療室)についてご説明します。

ICU(Intensive care unit 集中治療室)はよく知られていますが、SCUは文字通り脳卒中に特化して、発症2週間以内の超急性期に脳卒中の専門的な治療をする病室です。

専門治療といっても重篤な状態の患者を高度な医療機器を用いて治療するICUとは異なります。SCUでの診療は脳卒中内科(神経内科)、脳外科、リハビリ科を中心に構成された多職種専門チームによる急性期治療とリハビリテーションに力点を置いたものです。

発症初期の的確な診断と治療、悪化の兆候を見逃さない観察、早期にベッド上からのリハビリテーションが行われます。多職種専門チームは医師以外に専属の看護師、理学療法士や作業療法士が配置されています。

病院によっては口腔(こうくう)ケアをする歯科衛生士や嚥下(えんげ)や言語の訓練を行う言語聴覚士、栄養サポートチームや呼吸サポートチームなどが加わっています。病態により在室期間は異なりますが、機能改善に向けて濃厚な治療が行われます。

以前から脳卒中に関してさまざまな研究が行われてきました。その中で、SCUのような各種専門チームによる集中治療室の有効性が明らかになりました。

SCUで治療すれば「脳卒中死亡率」および「自宅復帰できずに施設に入所しなければならない人」はいずれも一般病棟で診療するよりも減り、自立して生活できる患者が増えることが分かりました。

しかし、厳しい設置基準があり、県内では那覇市内に1カ所しかありません。SCUを広めるには、脳卒中診療に加わる医師、看護師などスタッフの養成と、地域性を考慮した柔軟な基準の運用が必要と考えます。