皆さん、痔(じ)で悩んでいるけれど肛門(こうもん)科へ行くのは恥ずかしいと思っている方はいらっしゃいませんか? 痔は「日本人の3人に1人が患っている」といわれるほど、とてもポピュラーな疾患なのです。
痔の主な原因は便秘や下痢などの便通異常です。排便を正常に保てば痔になりにくいのですが、それを妨げる要因が現代社会にはたくさん存在しています。不規則な食事時間・ダイエット・運動不足などです。
生活習慣、特に排便習慣を整えれば痔になりにくいですし、症状が出てもこれらをうまくコントロールすれば、約8割の方が手術を受けなくても改善します。
病院を受診すると「すぐに切られる」と思われてはいませんか? 手術は最後の手段であり、多くの方が排便習慣の改善や薬剤で症状が改善します。
痔には「痔核(じかく)」「裂肛(れっこう)」「痔瘻(じろう)」があります。最も多いのが痔核で約6割を占めます。一般に「痔」とは内痔核(ないじかく)を指します。肛門の内側にできた痔核のことで、便秘などによる排便時の「いきみ」が主な原因です。
排便習慣の改善や薬剤で多くは改善しますが、改善しない場合には注射療法、ゴム輪結紮(けっさつ)、PPH(粘膜環状切除)など、体に負担が少ない治療もあります。
特に近年「ALTA療法」が注目を集めています。これは硬化剤を直接痔核に注入して痔を固める治療法で、痛みや出血が極めて少なく入院期間も1〜2日で済み、かつ効果は手術に引けを取らないと言われています。しかしすべての痔核に適応できる治療法ではないので、病院に問い合わせてみてください。
「裂肛」はいきみで肛門付近が裂ける病気です。激しい痛みを伴うため排便を我慢して便秘になりさらに症状を悪化させます。便を柔らかくし、薬剤使用でほとんどは改善します。
「痔瘻」は肛門周囲が細菌感染して炎症を起こし、膿(うみ)を出すおでき状の「瘻管(ろうかん)」ができるものです。治療には手術が必要です。
お尻の病気は「恥ずかしい」気持ちが働き受診が遅れがちですが、生活の質を著しく落としますので、勇気を出して一度受診してみてください。