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脳血管バイパス手術(2011年5月17日掲載)

豊見山 直樹・那覇市立病院

機能低下の進行防ぐ

バイパス手術とは、狭くなったあるいは閉塞(へいそく)した血管を迂回(うかい)して新しい血流路を設ける手術のことを言います。心臓の冠動脈バイパス手術が有名ですが、脳梗塞の予防に有効な場合があり、脳血管バイパス手術と呼ばれます。

脳は1・5キロに満たない臓器ですが、心臓が全身に送り出す血液の20%を消費する非常にぜいたくな臓器です。しかもエネルギーの貯蓄がないため、わずかな時間の血流停止も脳に大きなダメージを与えてしまいます。

人間の体は脳を守るために、脳動脈の自動調節機能や脳の前後左右の血管をつなぐ交通動脈など、脳の血管には多くの安全装置が付いています。

この安全装置の働きを総合したものが、脳循環予備能力と呼ばれるもので、多い人では通常の2倍近い血流を供給する能力があります。この予備能力のおかげで、大きな脳動脈で狭窄(きょうさく)や閉塞が起こった場合でも大きな脳梗塞を回避することができます。

ところがこの能力には個人差があります。個人の脳循環予備能力を超えて狭窄や閉塞がおこると、脳梗塞の危険性が高まります。また、脳梗塞には至らなくても、徐々に脳細胞が脱落してその部位の脳の萎縮が見られ、機能低下が進んでいくこともあります。これらの病態の進行を予防するのが、脳血管バイパス手術です。

一般的には動脈硬化によって狭窄や閉塞した場合に行われますが、子供や若年者に発生する「もやもや病」の治療、あるいは大きな動脈瘤(りゅう)の手術や血管を巻き込んだ脳腫瘍の手術で、バイパス手術を併用することもあります。

もちろん、すべての脳梗塞を予防できるものではありません。脳梗塞の多くは、生活習慣病の管理と薬による内科的治療で予防することが基本です。しかし、なかにはどうしてもバイパス手術の方が望ましい患者さんがおられます。

この手術は直径約1〜2ミリの血管、もやもや病では、0・5ミリほどの血管を短時間で吻合(ふんごう)する高度な技術が要求されますので、しっかりと検査をした上で手術の適応を決定して行います。