下痢は寝冷え、食べ過ぎ、冷たい物の取り過ぎや、精神的緊張で起こることもあります。ここでは受診機会が多く、重症感のある下痢・感染性腸炎を取り上げたいと思います。
感染性腸炎は「細菌性腸炎」と「ウイルス性腸炎」に大きく分けられます。前者は、高温・多湿な夏に多く、原因菌としてサルモネラ(鶏卵、肉類)、キャンピロバクター(肉類)、病原性大腸菌(肉類)、腸炎ビブリオ(魚介類)、黄色ブドウ球菌(手指の化膿(かのう)した傷)などがあります。汚染された物を食べて、1〜3日後に腹痛、発熱、下痢が起こります。
大腸粘膜の炎症がひどいと、便に血液や粘液、膿(うみ)が混ざり合ったり、熱が持続し、病原菌が血液中に入り込むこともあります。ブドウ球菌の場合は、その毒素が原因で、食べて3〜4時間後に、腹痛・下痢・嘔吐(おうと)が起こります。発熱はあまりありません。
後者のウイルス性腸炎は、気温や湿度が低い秋から冬に多く見られます。原因ウイルスとして、ロタウイルス、ノロウイルス、エンテロウイルス、アデノウイルスなどがあります。
中でも、ロタウイルス、ノロウイルスは感染力が強く、ロタウイルスによる腸炎は乳幼児に多く、突然の嘔吐と白色の下痢が特徴です。ノロウイルスは、時に貝類に付着し、それを食べて、急性腸炎を発症します。老健施設などでの集団発症もありました。
激しい下痢が続くと脱水を引き起こし、乳幼児・高齢者は重症化することもあります。症状が消えた後も、3〜4日、長い場合は1〜2週間も便にウイルス排出されます。
また、放置された吐物などが乾燥し周囲に巻き上げられ、それで二次感染を引き起こすこともあります。
感染性腸炎は、健康な人でもかかります。料理・食事前の手洗い、食品の十分な洗浄・加熱、調理器具の衛生管理、嘔吐物や便の迅速な処理が必要です。
生ガキや刺し身など生で食べる食材の場合は、できるだけ新鮮なうちに食べること、昔から用いられている酢やわさびにつけることもある程度、予防効果になると思われます。