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減圧症(潜水病)(2011年4月5日掲載)

清水 徹郎・南部徳洲会病院

特殊タンクで治療

さて、皆さまは減圧症という傷病名をご存じでしょうか? 潜水病と言った方が、通りがよいかも知れません。その名の通りダイバーが罹患(りかん)する特有の傷病です。

ご承知のように沖縄県は日本で最大のダイビングサイトです。ですから、減圧症になる患者さんも残念ながら多いのです。減圧症が起こる仕組みを知って、今後に役立ててください。

当たり前ですが、人間は酸素を吸って二酸化炭素を吐き出すことでその生命を維持しています。ところが私たちが呼吸している空気の約80%は窒素です。窒素は私たちの体内で利用されることはありません。ダイビングなどの高圧環境下において、すべての気体は液体である私たちの体液に溶け込みます。深い水深で体内に溶け込んだ窒素は、海から浮上すると再び気体となります。ちょうど炭酸飲料の栓を抜いたときに泡立つのと一緒ですね。これが体内で起これば血管が詰まって、さまざまな症状を引き起こします。

最初は皮膚のかゆみや赤みで始まり、肩やひざなどの関節が激しく痛むのが特徴です。重症になると胸の苦しさや、手足のまひ、さらには意識障害を引き起こして死亡することもあります。

この減圧症に対する唯一の治療法は再圧治療と呼ばれ、特殊なタンクに入って通常水深18メートル相当の圧力をかけて酸素吸入を行うことで窒素の泡を消し去ることです。特に重症な場合には医師や看護師が一緒にタンク内部に入って治療することが可能である多人数用の大型タンクが必要で、県内には3カ所あります。海上保安庁やダイビング業界と提携し、速やかな治療ができるようシステムを構築している最中です。

治療も大切ですが、まず「減圧症になるようなダイビングをしない」という予防が大切です。ダイビングを終えた観光客は航空機で帰ります。航空機のキャビンは0・8気圧と通常の大気圧より低いため、機内で発症する人も珍しくないのです。ダイビングの後、24時間以内は飛行機搭乗を避けるべきです。業種を超えて減圧症の予防に努め、多くの人にすばらしい沖縄の美ら海を体験してもらいましょう。