沖縄県医師会 > 健康の話 > ドクターのゆんたくひんたく > ドクターのゆんたくひんたく2011年掲載分 > 心臓病

心臓病(2011年2月8日掲載)

蘆田 欣也・北部地区医師会付属病院

胸の症状だけでない

みなさんは狭心症や心筋梗塞(こうそく)といった病気をご存じでしょうか。ともに心臓を養っている血管(冠動脈)が細くなったり詰まったりして起こる病気です。当然、心臓の病であるため胸の症状を訴えるのが一般的です。その代表的なものが「胸痛」や「胸部圧迫感」、「胸部絞扼(こうやく)感(胸が締め付けられるような感じ)」などですが、まったく心臓と無関係に思えるような症状が、実は心臓の悲鳴だった…ということも少なくありません。

一例を挙げてみます。

私がまだ大阪の病院で働いていたころの話です。ある日、70歳代の女性が循環器の病棟に入院してこられました。もともと重度の狭心症を患っておられた方でしたが「最近になって急に奥歯がうずくことが多くなった」とのことでした。

主治医をさせていただきましたが、まだ駆け出しだった私にはなぜ心臓病の病棟に歯がうずく方が入院されるのか、まったく理解できていませんでした。そんな私は当時の部長から「これがこの方の狭心症発作時の症状だよ」と教わりました。実際、その後に行われた血管造影検査で冠動脈の一部が閉(へい)塞しかかっているのが見られた時には、これが経験の差かとがく然としたことをいまでも鮮明に覚えています。

このように、一見したところ心臓とは無関係に思える症状でも心臓由来のことがあります。「歯が浮く・うずく」や「あごがだるくなる」などの歯周囲の症状であったり、「左肩の痛み・だるさ」や「みぞおちの痛み」などであったりと、種類はさまざまです。

もちろん歯の疾患や肩関節の炎症、消化管の病気などでもこのような症状が見られます。心臓病の多くは「発作的」に起こるのが特徴です。ですので、半日以上続くとか、ずっと以前から絶えずあるような場合は心臓病の可能性も低いかもしれませんが、突然起こってきたような場合には一度循環器の専門医を受診されることをお勧めいたします。