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おしっこの検査(2011年2月1日掲載)

島尻 佳典・島尻キンザー前クリニック

体内状態素早く判定

病院での診察や健康診断を受けた際、おしっこ(尿)の検査がありますが、この尿から体の中のいろいろなことが分かります。今回はそれについてお話ししたいと思います。

私たちの体は必要なものをくみ直し、要らないものを尿として外に出しています。これは腎臓という臓器の仕事です。体内は隅々まで水分で満たされ、細胞が生きていく上でとても良い環境が保たれています。人体の内部環境を最適に保つ機能を、医学の言葉で「恒常性」の維持と呼びます。腎臓は水分の出し入れにおける「恒常性」の維持に最も重要な臓器であり、尿の検査では「恒常性」が維持されているかどうかを素早く判定することができます。

例えば足がむくんでいる場合などに「尿比重」の検査をします。これで尿の濃さや薄さが分かるのですが、濃く出るはずの尿が薄いと、腎臓の機能が落ちていること、すなわち体の中の良い環境が保たれていないのではないか、ということが考えられるわけです。

また、おしっこに糖がもれ出る、このことを「尿糖」が陽性であるといいますが、それにより糖尿病という病気を疑います。糖尿病は放っておくと、ほかの臓器にも余計な病気(合併症)が出てくる厄介な疾患です。しかし、早めに診断することで将来の合併症の進行を遅らせることができます。さらに、尿に本来なら出るはずのない「蛋白(たんぱく)」が出てくる病気も分かります。「蛋白」尿の出現は腎臓の病態を示す重要な所見です。特に最近、心臓発作や脳卒中の原因疾患として「慢性腎臓病(CKD)」の関連が注目されるようになりました。

このように、痛みもなく、体にも負担をかけることもなく、少量で体の恒常性を判断し、大切な臓器の病気を予測することのできる検査の一つが尿検査だといえます。毎日当たり前のようにしているおしっこですが、体の中の状態と密接な関係があるわけです。皆さまも次回に尿検査の結果をみる際の参考にしていただければと思います。