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機能性消化管障害(2011年1月4日掲載)

折田 均・ハートライフ病院

検査で分からぬ疾患

医療機関を訪れる理由はさまざまですが、胃腸の具合が悪くて来られる方は結構な割合でいらっしゃいます。「おなかが痛い」「むかむかする」「下痢している」など、いろいろな症状を訴えられます。外来で一通りの診察が済めば、大概は「じゃあ検査してみましょう」となります。

血液検査、レントゲン、腹部超音波、内視鏡、コンピューター断層撮影(CT)などが単独あるいは複数をセットにして行われます。検査の結果で症状の原因が判明すれば、それに対応した治療が施されます。しかし検査結果が正常だったり、症状の原因になりそうな所見がなかったりしたら、一体どうするのでしょうか?

実際そのようなケースは日常の診療では、よく遭遇します。少し難しい病名ですが、機能性消化管障害(FGIDs)がこのケースに該当します。この病気の定義は、慢性の腹部症状があるにもかかわらず、検査しても器質的疾患(見てわかるような病気)が認められない機能性の消化器疾患群となっています。

最近ではテレビなどでも疾患啓発のコマーシャルが度々放映されており、過敏性腸症候群(IBS)もこの疾患概念のなかに含まれます。また数年前に総理大臣が突然辞任した際に使われた病名である機能性胃腸症(FD)も同様に含まれます。

FGIDsの原因としては消化管の運動機能異常、内臓知覚異常、心因性、最近では炎症や免疫などが挙げられています。また生活習慣や生理機能異常を来しやすい遺伝的素因も関与しているのではないかとも考えられています。基本的に命にかかわる病気ではありませんが、症状がとても煩わしく、日常生活にも支障が出ている人が大勢います。

治療は症状を改善する薬物療法が中心となります。最近はいろいろな薬剤が開発され、われわれ医者にとっても悩みのタネだったIBSやFDにも効果的なお薬が出てきました。

もし胃腸の調子が悪いんだけど、検査をしても異常なしと言われた方は、一度消化器内科の外来を受診されてみてください。IBSかもしれません。