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糖尿病と心臓(2010年12月21日掲載)

梶原 光嗣・中頭病院

症状なく冠動脈硬化

私は心臓や血管の病気を専門にしている内科医です。ここでは、虚血性心疾患を例にとって、糖尿病と心臓病の関わりについてお話したいと思います。

心臓は毎日休むことなく10万回も動き続けています。その燃料となるのが血液です。心臓は冠動脈という血管から血液を供給されています。この冠動脈に動脈硬化が生じ、狭くなった状態を狭心症、完全につまってしまった状態を急性心筋梗塞(こうそく)といいます。そして、これらを総称して虚血性心疾患と呼びます。

急性心筋梗塞は非常に怖い病気で現在でも発症した7〜8%の方が命を落とされています。高血圧、脂質異常症、喫煙などに加え、糖尿病は虚血性心疾患を引き起こす危険因子です。

糖尿病患者さんの虚血性心疾患にはいくつかの特徴があります。通常虚血性心疾患の患者さんは胸痛とか胸部圧迫感などの胸部症状を自覚するのですが、糖尿病の方は全く症状がないことがあります。また、血管の動脈硬化が広範囲にわたり、血管が枯れ枝のように細くなり、石のよろいのように硬くなっていることが多く、カテーテルを使った風船治療や外科のバイパス術の際に難渋することになります。

最近の研究で、このような動脈硬化は、糖尿病になる前段階の耐糖能障害の時点で、すでに始まっているということが分かってきました。糖尿病の患者さんは、糖を代謝するインスリンの分泌が低下するだけでなく、インスリンに対する抵抗性があり、食後に高血糖になることで、動脈硬化が進行します。

では対策としてどうすればいいのでしょうか? 一番いいのはもちろん糖尿病にならないことです。しかし、糖尿病と診断されても、早期に血糖値を良好なコントロールにしておくと、遺産効果といって、心血管病に対する抑制効果が長期に維持されるのです。

糖尿病の初期の段階では症状が何もないことがよくあります。ですから定期的に検査を受けて病気を見過ごすことのないようにしてください。