沖縄県医師会 > 健康の話 > ドクターのゆんたくひんたく > ドクターのゆんたくひんたく2010年掲載分 > 外傷の処置

外傷の処置(2010年12月7日掲載)

真志取 浩貴・ましどり整形外科

初期治療で回復に差

スポーツや競技では打撲や捻挫は頻繁に遭遇する外傷ですが、意外と初期治療に関する知識が薄いことが見受けられます。今回は外傷に対する基本処置を説明したいと思います。

打撲や捻挫に対してはRest(安静)、Ice(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(拳上)の頭文字をとってRICE(ライス)を行います。この初期治療を行うことで今後の回復期間を左右すると言っても過言ではありません。

受傷後30分以内にRICEを行わなければ、治る期間に数週間の差が出るともいわれています。けがをした部位は「安静」を保ち、動かしたり、体重をかけたりすることを避けます。マッサージなども行ってはいけません。次に患部にタオルを敷き、氷の入った袋で「冷却」します。約30分冷やし、痛みが出たらまた冷やすことを繰り返します。受傷してから2日間は冷やすことを行います。腫れは炎症の状態を表しています。腫れをできるだけ軽減させることが回復を早めます。

包帯やテーピングで局所を「圧迫」します。強く締め付けないように気を付けてください。そしてけがをした部位を心臓よりも高い位置に「拳上」するようにしましょう。歩けるから、手が動くからと病院への受診が遅れる場合がありますが、骨折していることも珍しくはないので早めに受診しましょう。

ここ数年で傷の処置方法、特に擦り傷は大きく変わっていますので、その治療内容を説明します。まず傷に土や泥などが付いているときは十分に水道水で洗い流します。特に消毒液は使用しません。傷から浸出液が出ますが、これは膿(うみ)ではなく傷を治す成分が含まれている液です。また傷は乾燥すると回復が遅れます。

以前は傷にガーゼを使用していましたが今は使いません。ガーゼは浸出液を吸収し、さらに傷を乾燥させてしまうからです。その代わりにラップを利用して傷の保湿を保ちます。この方法を湿潤療法と言います。2日に1回は傷を洗いラップを交換します。しかし傷の具合によっては治療方法も異なるため、ご心配なら医師に相談してください。