「腎臓が悪い」というと、どんなことを思い浮かべるでしょうか? 「腎臓が悪くなったら足がむくむんでしょう」。外来などで耳にする患者さんの声からは、そのように認識されている方が多いように思われます。しかし、腎臓が悪くなっても必ずしもむくむとは限りません。病状によって異なります。腎臓病は病状が比較的急激に進む「急性」のものと、比較的緩やかに進む「慢性」のものがあります。
「急性」で経過するものは体内環境が比較的急激に変化することが多いため症状が自覚しやすく、多くの方が医療機関を受診されます。
ところが、「慢性」で経過するものには体内環境の変化が緩やかなものもあり、体がその変化に慣れてしまい症状が自覚しにくいということがあります。そのため、「慢性」の腎臓病の方で医療機関を受診するきっかけ(症状)がないことがあり、それは腎臓病の発見の遅れ、治療の機会が失われていることになります。
現在「慢性腎臓病」という概念があります。「腎疾患の存在を疑わす所見」、もしくは「腎機能低下」が3カ月以上続く状態をいいます。腎機能で病期(ステージ)を5段階に分類し、病期の軽いほうからステージ1、2、3〜と数え、ステージ5では末期腎不全、透析療法を考慮することになります。
「慢性腎臓病」の場合、放置すれば腎機能障害が進行することが多く、できるだけステージの軽いうちに可能な治療介入し、各ステージにあった適切な治療をし、病状の進行をできるだけ抑えるということが目標になってきます。
「腎疾患」の存在や「腎機能低下」は簡便な血液、尿、画像検査などで行われ、「慢性腎臓病」の診断、ステージ分類ができます。総合病院などの大きな病院でなくても可能であり、定期的な健康診断やかかりつけ医での定期検査などが大切になってきます。そして、「慢性腎臓病」の診断がついた後は放置せず、各ステージに合わせた適切な治療を中断することなく「継続」していくことが重要です。