最近刊行された「加速する肥満」(NTT出版)というハーバード大学医学部のバレット氏の本の中に長寿の島として沖縄に関する記述があり、新鮮な野菜が豊富で魚と大豆でたんぱく質をまかないお米は腹八分目としたカロリー摂取制限により百歳以上生きる人の割合が世界一多いと紹介されています。もっともこの本の訳者により現在の沖縄は肥満の割合が日本一多いと注意書きがされています。ここに沖縄の現状の二面性が認められます。
すなわちカジマヤーを迎え元気ではつらつとした百寿者(センタナリアン)候補が大勢いる半面、未治療の高脂血症、糖尿病や高血圧を基盤とする心疾患や脳卒中が中高年から20〜30代の若年成人までまん延しています。
沖縄の長寿者の方々の特徴はボケが少なく、かつがんや生活習慣病に罹患(りかん)しておらず、地域の中での社会貢献度が高く、皆に尊敬されていることです。このような生き方を実現するためには、疾病を逃れ身体が健康なだけではなく、生涯にわたり健康な脳を獲得していく必要があります。
実際最新の研究によると、カロリー制限をすると長寿に関与する遺伝子の活性化が起こると同時に、記憶力をはじめとする脳活動が活性化することが判明しています。このことは動物モデルを用いた実験でも確認されています。
老化や認知症の原因タンパク(Aβ)を多量に蓄積しやすく遺伝子改変した動物を用いて餌を減らして飼育したり、遊び場など豊かな環境で運動をさせたりすると、脳内に蓄積するAβが低下します。つまり、ライフスタイルを工夫し、疾病になりやすい体質であっても、昔の人の知恵を守り腹八分目と適度な身体運動を取り入れることで脳活動を活性化し老化を予防することが示唆されているのです。
高脂血症、糖尿病や高血圧を持つ方は病院を受診し専門医の診察を受け指導をきちんと守ることで生活習慣病の悪化を予防できます。問題は当たり前のことをきちんとやろうと、われわれの脳が本気で思うかどうかなのです。われわれが生涯健康な脳を獲得した長寿者に学ぶことは多いと思います。