年々増加しているがん患者数。厚生労働省の人口動態統計によると、がんは現在、わが国における死亡原因の第1位となり、2008年には死亡総数の30・0%にあたる34万2千963人の方が亡くなっています。
そのがんの診断にいま重要な役割を果たしているのが、本日紹介するPET検査です。PET検査とは陽電子放射断層撮影(Positron Emission Tomography)の略で、単語の頭文字をとって「ペット」と呼んでいます。
がん細胞は増殖するため活動が活発で、体のエネルギー源となるブドウ糖を正常な細胞よりも数倍〜十数倍多く取り込む性質があると言われています。PET検査はそれを利用したもので、ブドウ糖によく似たFDGという薬(ブドウ糖に目印をつけたような性質のもの)を使います。FDGを体内に注射し、しばらく安静にして全身に行き渡らせたあとで特殊なカメラで撮影すると、体のどこにどのくらいFDGが集まっているかが分かります。そうやってFDGをたくさん取り込んでいるところを探し、がん病巣や転移巣を発見することができます。(ただし、1センチに満たない小さながんや、ごく早期のがん等については分からないことがあります)
PET検査の前には食事や糖分を含んだものを数時間控えていただく必要がありますが、撮影時間は30〜40分、問診や安静時間を含めても3時間程度ですべて終えることができます。寝ているだけの検査なので体に負担がかかりません。1回の検査でほぼ全身をチェックすることができ、がんの原発巣の状態だけでなく、転移の有無やその範囲まで判断できます。
がんは怖い病気ですが、診断・治療法は日々進歩しています。がんの進行の程度を把握し、より適切な治療法を検討する際にもPET検査はとても有用です。
今年の4月から、ほとんどのがん(早期胃がんを除く悪性腫瘍(しゅよう))に対しPET検査が保険適応となっています。がんと診断された場合、まずは主治医にご相談のうえ、PET検査を活用してみてはいかがでしょうか。