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頚髄症(2010年7月27日掲載)

當眞 嗣一・中頭病院

手足のまひに注意

「はしをよく落とすようになった」「ボタンがかけにくくなった」「字が下手になった」と手がしびれて、細かい作業が以前より上手にできなくなったと言う人が周りにいませんか。また、「歩くときによく転ぶようになった」「手すりがないと階段を上れなくなった」、などの歩きづらくなったことを年齢のせいにする人を周りに見かけませんか。

これらの症状は頚髄(けいずい)症でよく見られる症状で、しびれはあっても痛みを伴わない場合が多く、日常生活では最初はさほど困らないため、症状が悪くなってから、病院に駆け込む患者さんをよく見受けます。

これらの手足のまひの原因は、背骨の中を通っている脊髄(せきずい)神経、または脊髄から枝分かれして出ている神経根の障害によって起こる場合があります。加齢変化による頚椎(けいつい)症(椎間板(ついかんばん)の膨隆、骨のとげの形成)、頚椎後縦靱帯(じんたい)骨化症(首の骨の靭帯が骨に変わる)、椎間板ヘルニア(クッションの働きをする骨と骨の間にある椎間板が脊髄神経の通り道に飛び出る)等が原因で脊柱(せきちゅう)管(脊髄神経の通り道)が狭くなり、脊髄神経が圧迫されることより、神経のダメージが徐々に進みます。

診察を行い、頚椎の変形部位や不安定性の有無をレントゲンで、脊髄の圧迫の程度を磁気共鳴画像装置(MRI)で確認し、頚髄症の診断となります。軽いしびれや運動障害ならば様子を見る場合もありますが、日常生活に支障が見られ始めたら、手術的治療が選択されます。

手術方法は前方より圧迫を取り除き、骨移植して固定する方法(前方除圧固定術)、後方から椎弓を形成して脊髄の圧迫を解除する方法(椎弓形成術・脊柱(けきちゅう)拡大術)があります。いずれの方法でも技術的にはほぼ確立されていますが、まひの程度や発症してからの期間が術後の改善の程度に影響を与えるというデータがあり、早期の治療が望ましいと考えます。

思い当たる症状があれば、早めに整形外科(脊椎脊髄病専門医)を受診し、手術適応や手術時期、方法などを相談しましょう。