検診で肝臓に脂肪がたまっていて脂肪肝だと指摘を受けた読者は比較的多いのではないでしょうか。従来脂肪肝は心配ないとされていましたが、実際はその中から肝硬変ひいては肝がんになる方がいることがわかってきました。
肥満ないしメタボリック症候群の方はがんの罹患(りかん)率が高く、とりわけ肝がんの割合が高いことが示されています。糖尿病や肥満に由来する脂肪肝が肝硬変、肝がんの原因になっているのです。その上、脂肪肝から肝硬変を経て肝がんを発症する場合、一度に複数個の肝がんができる傾向にあり、また肝がん治療後も再発が多いなど治療に難渋します。
幸いなことに脂肪肝の指摘を受ける方のほとんどは問題ありません。しかし、脂肪肝の方のうち10%程度の方が慢性の肝障害を生じ、さらに脂肪肝の指摘を受けた方の2%程度は肝障害が進展して肝硬変になるといわれています。飽食がすすんでいる現代社会では今後、脂肪肝由来の肝がんが大きな問題になりそうです。
本土では肝がんの原因としてはC型およびB型の肝炎ウイルスによる肝臓病が9割以上を占めます(C型8割、B型1割)。一方、沖縄県では、私の経験した200人程の肝がんの患者さんでは肝炎ウイルスが関連する肝臓病が6割(C型4割強、B型2割弱)、脂肪肝あるいは原因不明の肝硬変が関与したと推定される肝がんが3割程度を占めていました。
原因不明の肝硬変のほとんどは脂肪肝が原因と想定されるのです。沖縄県では以前から肥満、いわゆるメタボリック症候群の方が本土より多いことが指摘されています。メタボリック症候群による糖尿病や心疾患などの生活習慣病の発症も大きな問題ですが、脂肪肝ひいては肝がん発症ともかかわっているのです。
脂肪肝の指摘を受けたら病院でその原因検索を含めた診断・治療を受けましょう。メタボリック症候群に関連する脂肪肝であれば生活習慣を見直し、治療を継続することで脂肪肝が改善され、肝がんを含めた糖尿病や動脈硬化性疾患(脳梗塞(こうそく)、心筋梗塞)の予防につながります。