「家族に乳がん患者がいないから大丈夫と聞いた」「何人も子供を自分のおっぱいで育てたから乳がんにならないと聞いた」「痛みがなかったから、知り合いに相談したら大丈夫と言われて」などなど。
乳がんが日本人女性におけるがんのトップとなって久しくなります。最近はさまざまなメディアを介して乳がんに関する情報に接する機会も増えてまいりました。日本人女性では約20人に1人の割合で乳がんになる危険性があり、今後も増えることが予想されています。
冒頭で触れたのは私が外来でお伺いした話の一部ですが、乳がんにかぎらず外来で耳にする情報には、医学的には根拠の乏しいウワサでしかないと言わざるを得ない部分も多くあります。
まず、乳がんの家族性に関しては、遺伝的な要因の関連は割合と低く、多くは無関係です。授乳に関しては、乳がんになる危険性を下げることは確かですが、授乳の経験がある、イコール乳がんにならないとはかぎりません。痛みに関しては初期の乳がんは、痛みを伴わない方が多いことも、意外に知られていません。
さらにはサプリメントや大豆製品に関する質問も多く受けますが、今のところ乳がんを予防する科学的に証明されたサプリメントはありません。大豆製品については伝統的な日本食のみそ、豆腐、納豆などの摂取によって乳がんの危険性を減らす可能性は調査中ですが結論は出ていません。
逆にとり過ぎが乳がんの危険性を高める可能性についても、大量の大豆イソフラボンサプリメントや、よほど毎日山のように大豆製品だけの食生活でないかぎり心配ありません。大事なことはバランスの良い食生活です。
われらが沖縄県は、戦後いち早く食生活の欧米化が浸透し、今やメタボリックシンドロームの人口比率が全国1位を誇っています。肥満は万病の元ですが、閉経期の肥満に関しては乳がんの危険性を高めることがはっきりと証明されています。これは根拠のあるウワサとして、ぜひ皆さんで広めましょう。