顔の中心の鼻を取り囲むように比較的大きな空洞があり、これを副鼻腔(びくう)といいます。副鼻腔炎とは、この副鼻腔の粘膜に炎症が起きていることをいいます。経過により急性と慢性に分け、風邪の後に起きる急性副鼻腔炎では、鼻の付け根や額の部分が痛くなり、黄色い鼻汁が出てきます。慢性になると鼻詰まりや頭が重い、においが分からなくなるなどの症状が出てきます。
急性副鼻腔炎の場合は、適切な抗生物質の投与と局所治療により、多くの場合軽減します。慢性化した場合、かつては手術が選択されることが多かったのです。今では、鼻のポリープなどがない場合は、マクロライド少量長期投与法を行うことが普通になってきました。しかし、この治療法を耳鼻科の外来で行うにあたって、患者さんから抗生物質を長期間投与することへの不安と疑問を質問されることがあります。
マクロライド少量長期投与法は、1985年ごろに当時都立駒込病院の内科医師であった工藤翔二氏が発見しました。不治の病であったびまん性細気管支炎は当時、緑膿菌がたんに検出された場合、5年後の生存率は9%で、高濃度に抗生物質を投与する方法が主として研究されていました。このびまん性細気管支炎に対して、あまり使われなくなっていたエリスロマイシン(マクロライド系抗生物質)を常用量の半分、長期間用いることで治癒することが可能になった治療法です。その後、びまん性細気管支炎は副鼻腔気管支症候群の1タイプであり、それに伴う慢性副鼻腔炎に対してのエリスロマイシンの効果が検討され、その優れた臨床効果が確認されたのです。
この治療法は、抗生物質を普通に飲む量の半分で長期に服用しますが、副作用の報告も少なく、成人から小児までの慢性副鼻腔炎の治療として、広く行われるようになってきました。慢性副鼻腔炎の治療として、かつて行われた手術に対する恐怖感をお持ちの人も多いかと思います。しかしこのように内服治療で治癒することがありますので怖がらずに耳鼻科を受診することをお勧めします。