沖縄県医師会 > 健康の話 > ドクターのゆんたくひんたく > ドクターのゆんたくひんたく2010年掲載分 > 膵嚢胞

膵嚢胞(2010年6月1日掲載)

小橋川 嘉泉・浦添総合病院

超音波内視鏡検査を

「膵嚢胞(すいのうほう)」は、膵臓(すいぞう)に膵液がたまる大小の袋です。健診による腹部超音波や、コンピューター断層撮影装置(CT)、磁気共鳴画像装置(MRI)の画像による診断の発達普及によって、膵嚢胞が小さいうちに発見される機会が増えてきています。

泡盛がおいしい沖縄県では、アルコール性慢性膵炎による仮性嚢胞がその一つです。それ(仮性嚢胞)は炎症や膵石(すいせき)などによる膵管の閉塞(へいそく)により起こります。抗膵炎薬、禁酒、脂肪を控えた食事療法などで治療します。

嚢胞が小さい場合だと自然消失することもありますが、時には大きくなり、胃腸への圧迫による腹痛や感染や黄だんなどの合併症を引き起こして、内視鏡的治療や外科的手術になることもあります。また嚢胞の有無にかかわらず、慢性膵炎では膵がんの合併がごくまれにあります。そのため定期的な腹部超音波検査なども必要です。

次に、膵嚢胞を形成する腫瘍(しゅよう)もあります。その代表的な疾患に膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)があります。IPMNは膵管の粘膜に粘液をつくる腫瘍細胞が発生し、その粘液により膵管が拡張し嚢胞を形成します。主膵管型、分枝膵管型、混合型の三つに分類されます。組織学的には良性から悪性まであり、良性から悪性へとゆっくりと変化して行くことがわかっています。

発がんの頻度も主膵管型は約70%、分枝膵管型は約25%と主膵管型に多く、主膵管径が非常に太い場合や、嚢胞の中に大きいイボのような隆起を持つものはがんが多いこともわかってきています。一般に膵臓がんは予後(治療後の経過予測)の悪いがんの筆頭ですが、IPMNは比較的予後が良いとされています。

膵嚢胞性疾患はほかにもいろいろありますが、特に最近では腹部CTやMRI検査のほかに超音波内視鏡検査(EUS)により嚢胞内や主膵管について精密に評価することが必要とされています。

EUSは通常の胃カメラ同様に外来での検査が可能です。膵嚢胞を指摘された際は、ぜひこのEUS検査が可能な病院を受診することをお勧めします。