近年「足の動脈硬化症」が増加しています。沖縄県においても例外ではなく、他県よりも多いのではという印象すら受けるのが現状です。
「足の動脈硬化」といわれてもピンとこないのが正直なところかと思います。長らく長寿県であった沖縄もメタボリックシンドローム等の生活習慣病の増加でその地位は揺らいでいます。生活習慣病を背景に「足の動脈硬化」は起こるのです。
この病気は足の筋肉に酸素や栄養を送る動脈が狭くなったり、閉塞(へいそく)したりすることで起こります。65歳以上では10〜15%に上ります。少ないと思いましたか? この病気の真に怖いところは「症状がなく」、「ゆっくり」と進行する点にあります。
実は患者さんはその数倍も隠れているのです。気づいたころには手遅れのことが多く、やむなく足の切断に至る患者さんをみると、われわれ循環器科医はとても暗い気持ちになります。がんは早期発見の態勢が整いつつあります。しかしこの病気の早期発見は病気自体を知る人が少ないため手遅れになりやすいのです。
どういう症状が出たら専門科を受診したら良いのでしょうか。典型的な症状はしばらく歩くとふくらはぎや太ももが痛くなり休憩するとまた歩ける、ひざから下が冷たく感じ左右で違う、つめの色が悪いなどがあります。進行すると足先が黒くなる、傷が治りにくく潰瘍(かいよう)化して腐る、傷口からばい菌が入り敗血症をきたすことがあり命にかかわる危険性があります。
この病気は全身の動脈硬化症の一つです。このため脳卒中や狭心症、心筋梗塞(こうそく)の既往がある人に多く合併します。喫煙者、糖尿病にも多くみられます。治療はカテーテルを用いた風船(ステント)治療、外科的バイパス手術や最近では幹細胞移植等の再生医療も行われています。そして運動によって症状の改善や予防ができることも知られています。自分の大切な足でずっと歩いていけるように、今日からマイペースで歩いてみませんか?