最近は映画でも「アバター」のように3次元立体(3D)画像がはやりだしています。医療の現場においても、手術前、手術中に身体の内部を写し出す3D画像が、手術の手助けとして利用できるようになりました。胸部外科においては、特に肺がんの手術の前に、患者さんの胸部のコンピューター断層撮影(CT)の際に造影剤を使用し「MDCT(64列)」という機械で撮影します。このデータをコンピューター処理し、動脈、静脈、気管支の画像を同時にあるいは個別に立体的に作成します。これらの画像を回転させつつ360度、どの角度からでも見ることができます。安全な手術に3D画像が非常に役立っています。
これまでの3D映画は、飛び出してくる画像が主体でしたが、医療の3Dはむしろ体内の奥行きが立体的に観察できます。医療用の画面モニターは、ハイビジョンシステムが導入されており、身体の中を直接、肉眼で見るよりも、より鮮明に見ることができるようになりました。人間の体内の画像は微細な観察で、いかにすばらしい世界かが分かります。さらに進化した医療機械として、患者さんから離れた場所でコンピューターを操作し、手術を行うダ・ヴィンチシステムというものが日本にも導入されました。
日本の医師は世界的にみても、非常に器用だといわれています。このような外科手術支援ロボットがあらゆる医療施設で使用可能となれば鬼に金棒でしょう。医療の進歩は患者さんに、さらに痛みの少ない外科手術をもたらすことでしょう。
近年、産婦人科医、小児科医が少ないと報じられていますが、現実には外科医になる医師が減っています。数年先には足りなくなり社会問題化すると思われます。将来は3D画像を備えた高度のロボットが外科手術を行うことになるのでしょうか? テレビドラマに登場するほどかっこよくはなくても、多くの若い医師が日本の医療の質を維持するためにも外科医を目指し、わが国の最先端医療を担ってほしいと思います。