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1型糖尿病(2010年5月4日掲載)

湧上 民雄・あがりはまクリニック

肥満とは無関係

皆さんは糖尿病というと典型的な生活習慣病であると思っている方が多いと思います。事実、沖縄県では生活習慣の変化に伴い肥満者が増えたために糖尿病の発症が日本一になっているといわれています。

糖尿病は大きく1型糖尿病と2型糖尿病に分けられます。糖尿病患者の多くは中高年になって肥満を原因としておこる2型糖尿病です。本日は比較的まれな糖尿病である1型糖尿病について話したいと思います。

1型糖尿病は小児に多いことから「小児糖尿病」もしくは治療にインスリンが絶対的に必要なことから「インスリン依存型糖尿病」とも呼ばれていました。細菌などの外敵から体を守る仕組みを免疫と呼んでいますが、1型糖尿病はこの免疫機能の異常でおこることが多いのです。一方で原因がよく分からないタイプのものもあります。

1型糖尿病は原因を問わず、最終的には血糖をコントロールする重要なホルモンであるインスリンがほとんど体内で作れなくなり、終生インスリンの注射が必要になる病気です。1日に4回インスリンの自己注射をするというのが標準的な治療法で、大変な節制と忍耐力を必要とします。

先ほど、1型糖尿病は小児に多いとしましたが、小学生が自分でインスリンを注射したり、お菓子も食べずに食事療法を頑張ったりしていると聞くと一般の方は大変驚かれると思います。しかし実際にそういう患者さんは日本全国にたくさんいらっしゃいます。1型糖尿病はインスリンを注射したり、食事に気をつけたりと日常生活に大変制約の多い病気ですが、コントロールがうまくいっていれば合併症もおきず、プロスポーツの選手や医師として成功された方も大勢おられます。

糖尿病は生活習慣のひずみからくる肥満が引き金となりますが、糖尿病になるかどうかは遺伝も大きく関係しており、遺伝的に糖尿病になりにくい方は肥満体でも糖尿病になかなかならないことがあります。

少なくとも糖尿病の一部には、生活習慣とはまったく関係なく糖尿病になってしまう1型糖尿病があることを理解してほしいと思います。