「腰の痛みで通院治療を受けているがよくならない」と、内科を受診したところ、肺がんと診断されるケースがあります。肺がんの骨転移です。すでに進行がんですので、完治に導くことは不可能です。せきやたんなどの呼吸器症状はないことも多く、多数の腰痛患者が来院する整形外科外来で肺がんの早期診断を期待するのは無理があります。胸部エックス線検診を受けていれば早期に発見できた可能性があり悔やまれるところです。
肺がんによって引き起こされる症状はさまざまです。頭痛や嘔吐(おうと)のため脳神経外科医を受診し肺がんの脳転移と診断された例や、心臓に水がたまって救急外来で発見される例もあります。私が新患外来を担当するときは、検診を受けていない方については、呼吸器症状だけではなく、頭痛、肩こり、食欲不振でも肺がんの可能性を疑います。しかし症状で発見される肺がんはすでに進行がんであることが多いですので、年に1回程度の検診は受けるようにしたいものです。
最近はコンピューター断層撮影(CT)によるがん検診ができる施設があります。CTによる検診は小さな肺がんを発見することができるので、肺がんによる死亡を減らすことが期待されています。しかしながら、有効性についてはまだ確立していません。一般診療で行われているCTは精密検査を目的としているので被ばくする線量が多く、気軽に行うものではありません。
親族が肺がんになったので心配、またはユタに病気があるのではないかと言われて気になるという場合は、人間ドックを行っている施設で被ばく量に配慮した低線量CTによる検診を受けることをお勧めします。
「たばこを吸い続けるため検診を受ける」という態度は問題です。たばこを吸う方に発生する肺がんはCTでも早期発見できないものがあります。また、喫煙により肺機能が落ちると早期発見できても治療が難しいのです。肺がんで死にたくない方は禁煙をお勧めします。