高血圧までいかないが、血圧が少し高めという人に医師は「少し高めですね。塩分を控えめにして、適度の運動をし、体重を落とすように生活習慣を改めてください。もちろん、禁煙は実行してください」と言います。そしてこう続けます。「もし改善がないなら、降圧剤を内服しましょう」。
しかし「少し高め」に該当した人の半分は、降圧剤は使わないと医師に伝えられています。では軽症高血圧の手前、正常といわれる血圧の範囲内で少し高めの人が降圧剤を内服したらどうなるのでしょうか?
アメリカで興味深い臨床試験が行われました。概要はこうです。血圧が正常内だが高めの健康成人を約400人ずつ2つのグループに分けて、一方のグループは4年間、生活習慣を改めてもらいました。もう一方は生活習慣を改め、さらにカンデサルタンという降圧剤を最初の2年間だけ内服してもらいました。その後の2年間は降圧剤を止めて生活習慣の改善だけを行いました。その4年間それぞれグループの血圧の経過を追跡しました。両方とも血圧は下がりましたが、降圧剤を内服していたグループは内服している間、さらに10mmHgも下がったのです。しかし、そのグループも内服をやめると差は縮まり、4年目には二つのグループの差は2mmHgとなりました。この差をコンピューターで解析すると、差はずっと続く可能性が高いと判定されたのです。
この差に注目してみましょう。「2年間内服しても止めたら、たった2mmHgしか差がでない」と考えるか、それとも「止めても2mmHgの差が続く」と考えるかです。国が進める「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」では「日本人の平均収縮期血圧(上の血圧)が2mmHg下がれば脳卒中死亡者9127人、死亡率6・4%が減少する」とされています。この事を考えると、内服する時期が来れば、医師のアドバイスを受け降圧剤を内服しても良いのではないでしょうか。
血圧が正常高値でさえそうです。内服が必要な状態と判断されるなら始めるには早すぎるという事はないようです。