昨年、私は本土出張中に駅前の飲み屋で鳥肝のさしみの誘惑に負け、それで一杯やったところカンピロバクターというバイキンによる腸炎にかかり、1週間ひどい目に遭いました。一般にカンピロバクターなどの細菌による食中毒は夏に多いです。今回は冬場(11月から3月)に多いノロウイルスによる食中毒についてお話しします。
ノロウイルス食中毒は世界に広く分布し増加しています。日本においては2001年から7年連続で食中毒患者数1位となっています。2位がカンピロバクター、3位がサルモネラとなっています。ノロウイルスは乳幼児から高齢者まで感染し、口から入り小腸で増殖して嘔吐(おうと)、下痢、腹痛を起こします。ウイルスに汚染されたカキやシジミなどを加熱せずに食べたり、ウイルスのついた手で作られた料理を食べたり、感染者の便や吐物を介して感染します。
ノロウイルスの感染力は強く、10〜100個のウイルスが口に入るだけで、7、8割が発症します。特別な治療薬はありません。一般に1〜3日で自然とよくなりますが、免疫低下状態では重症化もあり得ます。
便器、衣類、ドアノブ、床などについた便、吐物が間接的に口に入ったり、乾燥して粉じんとなり空気中に浮遊した便、吐物を吸い込んだりしたら感染します。そのためマスク、手袋を着けてそれらを処理してください。学校、病院、老人施設など半閉鎖空間では感染の拡大があり得ます。症状が消失しても1〜2週間は便中にウイルスがいるので注意が必要です。さらに感染しても症状が出ない人が2、3割いることになりますが、この人たちの便も感染源になり得るので、結局みんなが普段から手洗いに気を付けるべきです。
ノロウイルスは熱や消毒に対する抵抗性が高く、ウイルスで汚染された衣類、食器などは中心温度85度で1分以上の加熱あるいは塩素系漂白剤(ハイター、ブリーチなどならキャップ1杯5ccを500ccの水で薄めて100倍希釈)による消毒(30分間)が必要です。なお手洗いの場合は石けんを使い流水で流せばウイルスは洗い流されます。