「医者にかかる10カ条」というのがあります。患者さんがどのような心構えで医療を受ければよいのか分かりやすくまとめたものです。それは(1)伝えたいことはメモして準備 (2)対話の始まりはあいさつから (3)よりよい関係づくりにあなたも責任がある (4)自覚症状と病歴はあなたの伝える大切な情報 (5)これからの見通しを聞きましょう (6)その後の変化を伝える努力を (7)大切なことはメモをとって確認 (8)納得できないことは何度でも質問を (9)治療効果を上げるためにお互いの理解が必要 (10)よく相談して治療方針を決めましょう―というものです。
この中で私が大事だと思う3項目を紹介します。まず(2)です。あいさつは人として当たり前のことです。医師と患者さんの良好な関係を築く上で重要なことなので、最近は医学部でも学生に対して患者さんへのあいさつを徹底するように実地訓練しています。
次に(4)です。ある健康上の問題で初めて医者にかかる場合、医者の立場から言うと患者さんの話だけで7割は診断(病名)がつきます。残り2割は診察で決まります。残り1割を検査で確かめるという具合です。ですから患者さんから自分の症状を正直に正確に伝えていただけると、正しい診断にたどり着きます。
最後は(5)です。私は患者さんに対してできるだけ今後の見通しを話すようにしています。
しかし時間がなくて十分話していない医師もいると思います。そこで患者さんの側から病名や治る見込み、いつ受診したらよいかなど率直な疑問を投げかけてほしいです。
でも、診察室の中では緊張して頭が真っ白になり診察室を出たとたん、言い忘れたことを思い出すことがよくあります。そのときは診察室の「ドア」の「ノブ」を開けて「質問(クエッション)」してください。これをわれわれは「ドアノブクエッション」と言って、なるべくそうならないように心がけています。
患者さんと医師がお互いによい関係を築くことで、病気に対して共同戦線を張って頑張っていけると思います。