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ひざの健康食品(2010年1月26日掲載)

與座 格・整形外科よざクリニック

効果確かな治療を

「グルコサミンを飲んで、医者から見放されていたひざ痛も見違えるほど改善! 今では階段も楽々!」。今日もテレビで関節のサプリメントのコマーシャルが流れます。最近、当院の外来でも患者さんの問い合わせは増えるばかりです。「先生、軟骨の栄養剤を出してください」。私は次のように答えます。「今のところひざの痛みに本当に効果があるかどうか分かりません。それに残念ですが病院では売っていないのですよ」

変形したひざの治療として、ひざ関節にヒアルロン酸を注射する治療法は20年以上の歴史があり、その効用は広く認められています。一方グルコサミンやコンドロイチンを内服するという治療法はどうでしょうか。意外にその歴史は古くヨーロッパでは1980年代より、日本でも1990年代より健康食品として使われ始め徐々に広がったといわれています。

医療者はこれまであまり気にもとめないでいました。その中で、2000年になって欧米の一流医学誌にグルコサミンの有効性を報じた論文が発表され、多くの医療関係者を驚かせました。しかし有効ではないという反論もあり、現時点でわが国では保険適用はありません。

わたしは患者さんの気持ちがまったく分からない訳ではありません。なぜなら従来有効とされるひざの治療法は患者さんにはつらいことばかりですから。体重を落とすことはとても大変だし、筋肉を鍛えるのはつらくて続きません。ヒアルロン酸の関節注射は痛いし、痛み止めは副作用が心配です。

天然成分を飲むだけで痛みが軽くなるのならこんないいことはありません。「何でこんないい薬を国は保険を認めてくれないの!」と言いたくもなりますが、万人に広く効くかは今のところ分からないのです。

従来からある地道な治療は、ゆっくりですが効果は証明されています。サプリメントの効用が明らかにならない限り、安易な治療法に流されず正当法で治療するほうが「急がば回れ」ですよ。