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がんの縮小手術(2010年1月5日掲載)

河崎 英範・沖縄病院

早期発見で機能温存

手術はがん治療の中でも重要な治療手段の一つです。がんの発生した臓器ごとに確立した手術方法があり、これを標準手術といいます。簡単に述べると、がんの発生した臓器を切除し、その周囲のリンパ節を予防的に切除します。しかし臓器を切除することでその機能が低下し、手術後、体調の回復に時間がかかりつらい時期が続くことがあります。そのため早い段階で発見されたがんには標準手術より小さく切除する方法として縮小手術が考案されました。

例えば肺がんの手術について述べます。肺は、右3つ左2つの肺葉に分かれています。肺がんの標準手術は、肺がんの占拠する肺葉を切除し、肺の根元のリンパ節を切除することです。しかし、最近、コンピューター断層撮影(CT)の普及により非常に小型で、浸潤(組織内のがんの広がり)やリンパ節転移がなく、病理学的にも浸潤がないと推定される肺がんがみつかるようになっています。このような場合、肺葉を細かく分割した区域単位で切除することがあります。より早期の場合は肺の一部を楔状(けいじょう)(くさび型)に切除しても治癒する場合があります。肺葉切除では肺機能が約2割低下しますが、区域切除では1割以下、楔状切除ではほとんど肺機能が低下せず、手術後の社会復帰が早くなるというメリットがあります。症例ごとに検査結果を総合的に判断し、根治性と機能温存を考慮して手術方法が決定されています。

当院のこれまでの肺がん手術の推移をみると、縮小手術の割合は1980年代は3%程度でしたが、1990年代には7%、最近は10%と増えています。より早期に発見され、小さく切除してもよいと判断される症例が増えた結果といえます。

縮小手術のメリットは、肺がんの手術では肺機能温存ですが、消化器のがんでは消化器機能、乳がんでは容姿面でのメリットがあります。早期に発見できたがんの場合、臓器を小さく切除することで、手術後の身体的、精神的ダメージを少なくすることができます。この点からもがんの早期発見が大切だといえます。