みなさんは、漢方薬にどんなイメージを持っておられますか? 副作用が少ないけれど、長く飲み続けないと効かないお薬だとか、病院で診てもらっても治らない慢性の病気のときに漢方薬局で買うお薬、などと思っておられる方も多いのではないでしょうか?
1800年ほど前に中国の張仲景(ちょうちゅうけい)という人が編さんした「傷寒論(しょうかんろん)」という漢方薬の古典があります。その中に収められているのは、インフルエンザやチフスのような急性疾患のための処方で、今でも実際に使われています。
西洋薬の抗インフルエンザ薬とほぼ同等の効果があった、という最近の報告もあります。漢方薬は、急性の病気に対しては即効性があります。
漢方薬の発祥の国、中国では、西医(現代西洋医学)と中医(中国伝統医学)の両方の医師がいる総合病院がたくさんあり、ほぼ、どんな病気でも中医で診てもらうことができます。
中医学の大きな特徴は「整体観念」です。病気を見るときに、身体全体のバランスの崩れを見ます。細部を突き詰めていく現代西洋医学とは、別の角度から人体を見つめるもうひとつの医学なのです。
中医学には「未病を防ぐ」という考え方があります。まだ病気とはいえないけれど、調子が悪いというときに、発病する前に注意を払って病気の発生を食い止める、という考えです。
最近、疲れやすいし食欲もない、病院で検査をしても異常は見つからない…というようなときに、現代西洋医学では経過観察ということになりますが、中医学ではその人のバランスの崩れがもとに戻るように、漢方薬を処方したり生活指導したりします。
病気になりそうな不調なとき、病気にかかってしまったけどまだ早期であるとき、このようなときが、いちばん漢方薬の効果があるときなのです。
かぜをひきかけたとき、早めに病院に行って漢方薬を処方してもらってはどうでしょう? また、かぜはほぼよくなったけれど、まだ少し微熱があったりせきが続いたり、というときにも漢方薬は有効です。