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感染症(2009年12月22日掲載)

大湾 勤子・沖縄病院

正しい予防策で備え

2007年に高校生、大学生を中心とした麻疹(ましん)(はしか)が関東地方で流行し、県外から持ち込まれて県内でも発症した。ことし4月には芸能人の結核発病が報道され、結核に関心が集まった。その一月前の3月にはブタ由来のいわゆる新型インフルエンザがメキシコから世界中に広がり、沖縄県では8月中旬に全国に先駆けて流行の第一波がおとずれた。麻疹、結核、インフルエンザ、いずれも聞きなれた感染症である。これらの感染症は、伝染するために、病気に対する正しい知識がないと必要以上に恐れ、情報に振り回されてパニックになる。

伝染力の強さからいうと麻疹は1人の感染者から12〜18人、インフルエンザは2〜3人発症するとされている。結核は結核菌にさらされた場合10人に1〜2人程度しか発病しない。麻疹、インフルエンザはウイルス、結核は細菌が病原微生物であり、いずれも患者の咳(せき)、くしゃみなどに含まれる病原体を含んだしぶき(飛沫(ひまつ))を吸い込んで感染する。

飛沫は病原体の周囲に水分があり、落下速度が速いため1メートル以上は飛ぶことができない。したがって咳、くしゃみをするときにはティッシュなどを使い口に覆いをすること、マスクを着用することで飛沫を空気中に飛散させない封じ込め策となる。一方咳をしている人から1メートル以上離れることで飛沫の吸い込みを避けることができる。また咳やくしゃみなどによるしぶきがついた手を速やかに洗うことで、病原体を洗い流し、手を介した他者への伝染の拡大を抑えることができる。

ところが麻疹、結核はしぶきの水分が乾燥して空気中に浮遊している飛沫核となった粒子を吸い込んで感染することが多いとされている。飛沫核は粒子が小さく落下速度が遅いので長時間浮遊する。したがって飛沫核感染は空気感染と同じ意味である。残念ながら通常のマスクで空気感染は予防できない。そのため換気をよくして飛沫核をとどまらせないようにすることが感染予防になる。

感染力の強さ、感染経路を知って、その予防策を確認することで、恐れず、またあなどらずに感染症に備えることができる。