皆さんは不整脈にどのようなイメージをお持ちでしょうか。不整脈といっても(1)症状はなく健康診断で偶然見つかる(2)症状があり日常生活に支障を来す(3)突然死など直接生命を脅かす−とさまざまです。不整脈診療で大切なことは患者さん自身に危険性も含めて不整脈のタイプを正しく理解してもらうことです。そのためには、心臓の状態(基礎心疾患の有無や心機能)、家族歴など遺伝的要素も調べる必要があります。不整脈の背景に心機能を低下させる心臓病があると不整脈の危険性が大きく変わってくるからです。
外来ではまず心電図、レントゲンなどの検査を行い、必要に応じて心エコー、運動負荷試験を行います。不整脈を確認するには、発作時の心電図記録が必要ですが、発作の頻度が低いものほど診断が困難です。月に数回では24時間心電図検査を繰り返してもつかまりません。そんな時、携帯型心電計が役立ちます。発作が起きた時、胸に軽く当てるだけで心電図を記録でき、小さくて持ち運びも便利で繰り返し記録可能です。
不整脈の治療はこの10年で飛躍的に進歩しました。生命に危険があると判断された場合は、ペースメーカーや植え込み型除細動器により命を守る治療をします。このような治療は、脈拍が60以下になり失神などを伴う徐脈や、心室細動に伴う心肺停止蘇生(そせい)後などに行われます。しかし、大部分の不整脈は命の危険性がないため、症状を楽にする治療が中心となります。
偶然見つかる不整脈の代表が期外収縮であり、起源が心房、心室のどちらであろうと健康な心臓に起こっている場合は悪さをしないため、経過観察のみで十分です。症状のない徐脈も治療の必要がありません。症状が強く著しく生活に支障を来す不整脈の代表が発作性頻拍症ですが、カテーテルアブレーション(不整脈の発生源を高周波で破壊する方法)の登場で手術せずに根治可能となり、長期の内服治療から解放されました。不整脈を心配している方は怖がらず、早めに専門外来で受診することをお勧めします。