腹痛を訴え受診した患者さんが腸閉塞(ちょうへいそく)の診断でそのまま入院になることはまれではありません。場合によっては緊急手術になることがあります。さて、この腸閉塞がどういうものかと言いますと、読んで字のごとく、何らかの原因で腸の通過が悪くなっている状態のことで、オナラや便が出ない、おなかが痛い、おなかが張っている、吐くなどの症状が出現します。
腸閉塞には(1)腸の動きが悪くなって起こる(2)腸がねじれたり詰まったりして起こる−の二つのものに大別されます。(1)の場合は食事を止めて薬を使うことでよくなることが多く、食事が取れない間は水分や栄養補給のために点滴を行います。(2)の腸閉塞の場合は、血流障害の有無が重要になります。血流の悪い状態が数時間続くと、その部分の腸が腐って穴が開いてしまいます。これは命にかかわる危険な状態で、たとえ夜中でも緊急手術となります。また血流障害がなければ、鼻やこうもんから排液・減圧用の管を入れ、しばらく様子をみます。よくならない、または症状が強くなっていく場合は手術治療が必要になります。
症状、おなかの所見、血液検査、エックス線検査、コンピューター断層撮影(CT)検査などから腸閉塞の原因を探し、最終的には手術が必要か否かを判断します。それでもおなかを開けてみなければ原因が分からないケースもしばしば経験します。
腸閉塞の精査で大腸がんが発見されることが少なからずあります。よく話を聞きますと、以前から便秘や腹痛などの症状があったという方がほとんどです。その時点で検査を受けていれば腸閉塞という緊急事態は回避できるものと考えます。便秘が続いているな、そういえばオナラも出しづらいな、と感じたら腸閉塞になりかけているかもしれません。早めの受診をお薦めします。
もちろん大腸がんに関しては、症状のない時に検診で発見されることが望ましいです。できれば検診を受けてください。