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食物アレルギー(2009年10月27日掲載)

田中 貴俊・南部徳洲会病院

食べる治療の試みも

アレルギーが関係する病気の一つに、食物アレルギーがあります。アトピー性皮膚炎の合併も少なくありません。食物アレルギーの原因食物には、卵、牛乳、小麦、大豆、フルーツ、エビ、カニ、魚卵、ピーナツなどがあります。

食物アレルギーの症状としては、皮膚症状(じんましん)、胃腸症状(嘔吐(おうと)、下痢)、呼吸器症状(せき込み、喘鳴(ぜんめい))、そして、最も怖いアナフィラキシー・ショックがあります。

アレルギー症状を起こすかどうかは、わたしたちが持っている免疫システムによっています。免疫とは、自己か非自己かを判断するシステムです。

例えば、インフルエンザウイルスは、わたしたちの体に多くの被害をもたらす非自己です。そこでわたしたちの体は、インフルエンザウイルスを敵と見なして攻撃を行い、排除します。

では、食物はどうでしょう。食物も非自己ですが、栄養を得るためには、自己に取り入れなくてはなりません。そこで食物に対しては、敵と見なさないような配慮が必要となり、これを体に慣れさせ、受け入れるという意味で免疫寛容と呼んでいます。

この免疫寛容がうまく働かずに、食物を敵と見なすことで起こる反応が、食物アレルギーです。

従来の食物アレルギーに対する基本治療は食物除去療法でした。実際に食べてアレルギー反応を検査する経口負荷試験を定期的に行いながら、制限食物の解除の内容と時期を決めていましたが、解除までには何年も要していました。

昨今、ラッシュ法と呼ばれる方法が、専門施設で試みられています。これは入院の上、短期間で目標食物を少量ずつ、頻回に食べさせることで、体に免疫寛容を生じさせようとするものです。当然、アレルギー症状を生じる危険があるので、十分な準備と説明が必要です。

さらに、今後実用化が期待できそうなのが、経口ペプチドワクチンです。これは、アレルギー症状を起こす食物から、治療に効果がある部位のみを精製したもので、高い安全性と有効性が特徴です。