有名芸能人らが覚せい剤や大麻などの使用で逮捕され、薬物使用の広がりに注目が集まっています。わが国は薬物流行の第3期といわれて久しく、暴力団関係者などだけでなく一般の人々に薬物使用が広がっているのが特徴です。
依存性薬物とは精神に作用する物質です。依存とは(1)これらの物質を強い欲求で使用し(2)やめようと思っても統制が難しく(3)薬物をやめると離脱症状が出現しそれを回避するために摂取を繰り返し(4)使用量が増え(5)薬物を使用するために楽しみや興味を無視して薬物中心の生活をし(6)明らかに有害な結果が生じても依然として使用する―という状況の3項目以上が経験される状態です。依存には精神依存と身体依存があり、精神の依存は快感や安心感など精神的作用を求めて薬物を使用し、身体的依存は使用をやめると自律神経症状(発汗、高血圧、ふるえなど)や精神症状(意識障害、幻覚)など離脱症状を生じることです。
さて依存性薬物には覚せい剤に代表される気分高揚を目的として使用する薬物(コカイン、MDMA)と、ヘロインに代表される気分の鎮静や安楽さを目的として使用する薬物(アルコール、大麻、安定剤、有機溶剤)があります。これらの薬物はそれぞれに特徴があり、使用する状況でも現れる状態が変化します。アルコールを例にとればゆっくりした時には眠気を誘い、宴会などで仲間と飲めば気分を高揚させます。また直接幻覚を生じるLSDのような薬物もあれば、連続使用している間に神経に異常をきたし、使用時やフラッシュバックのようにその後も幻覚や妄想を生じる覚せい剤や有機溶剤、離脱症状として幻覚や意識障害を生じるアルコールやヘロインなどがあります。
違法性薬物の使用は10代の半ばに興味半分で始まり依存を形成していく、思春期や青年期の病気という側面がありました。しかし現代は安易な気分の変化を求めて使用するケースも目立ち、事態が深刻化し社会的な問題を引き起こすまで問題を無視している大人も多くみられます。回復には刑罰や専門的治療を受けるだけでなく、薬物依存回復者施設(ダルクなど)や自助グループ(NA)など回復者との出会いが大切です。