「健康に暮らしていきたい」。多くの方が最も望んでおられることかと思います。厚生労働省の統計によると、死因順位別にみて第1位は悪性新生物(多くはがん)、第2位は心疾患、第3位が脳血管疾患となっています(平成2006年)。心疾患と脳血管疾患には、高血圧、糖尿病など生活習慣病が深く関係していますが、生活習慣病の原因として肥満が重要であり、メタボリック症候群の早期発見を目指し、昨年4月には特定健診が始まりました。
ここで、第1位のがんについて考えてみます。がん死因部位別にみると、男性では、肺がん、胃がん、肝臓がん、ほぼ同数で大腸がんの順となっており、女性では、大腸がん、胃がん、肺がん、乳がんの順となっています。大きな問題は、この中で大腸がんが右肩上がりで年々増加傾向にあることです。近年、肥満があると大腸がんになる危険がやや高くなることがわかってきました。また、沖縄県のある地域で私たちが行った調査では、糖尿病の患者さんが発症するがんで最も多かったのは、大腸がんという結果でした。
残念ながら現在、沖縄は男女ともに日本一の肥満県です。これまで述べてきたように、肥満は心疾患、脳血管疾患だけでなく、がんにもかかわってきます。今後肥満人口増加による大腸がんの増加を心配しています。
大腸がん死亡を減らすためには、検診やドックなどを受診して、症状のない段階で早期発見を心がけることが大切です。沖縄県のがん検診受診率は20%台しかなく、さらに異常があって精密検査が必要な場合も多忙や不安などで先送りされて、手遅れの状況で診断されることもある現状が問題となっています。
大腸がんは、がんの中でも早期発見しやすく、早期のがんであれば、1泊程度の入院による内視鏡治療で完治することもしばしばです。日本は内視鏡先進国として知られ、質の高い内視鏡検査を受けることができます。恵まれた環境を大いに利用していただきたいと思います。多忙な生活の中、つい後回しになっているご自身の健康をみつめなおしてほしいと願っています。