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アドレナリン自己注射薬(2009年9月15日掲載)

佐々木 秀章・沖縄赤十字病院

即時型アレルギーに有効

アレルギーという言葉は皆さんよく聞かれることと思います。これは何らかの形で体に入ってくる異物(食べ物や薬、虫刺されなど)から体を守る免疫という機能が働きすぎて、自分の体に悪い影響を与えてしまっている状態です。さらにアレルギーの中でもほんの数分程度で症状が悪化し、生命の危機にいたる可能性があるものをアナフィラキシー(即時型アレルギー)といいます。これが起こると気分不良や体が赤くかゆくなったり息苦しくなったりして血圧も下がってしまい、救急車で病院に運ばれるまでに大変なことになってしまうのです。

アナフィラキシーは、蜂刺傷(はちししょう)や食物(そば、ピーナツ、卵など)のほか、いろいろな薬でも起こります。原因が明らかであれば予防が一番ですが、もし発症した場合にはアドレナリンという薬が最も頼りになります。しかもできるだけ早期に使う必要があります。そこで登場したのがアドレナリン自己注射薬です。エピペンという名前の薬が使われています。フェルトペンのような形で、自分でアナフィラキシーだと思ったらキャップを取って太ももに押し付けるようにして注射します。映画のワンシーンのように、ズボンの上からでも大丈夫です。

外国では以前より使用されていましたが、日本では2003年に蜂刺傷で認められ、今では食物および薬物などによるアナフィラキシーにも使えるようになりました。本人の状態が悪くて自分で注射できないときには保護者はもちろんですが、学校であればすべての教職員が、救急隊が到着したならば救急救命士が代わりに注射することも認められています。

すぐに簡単に使用できることから、歯科医院で万が一のために準備されていることもあります。ただしアドレナリンは心肺蘇生(そせい)にも使われる強い薬ですので取り扱いには十分注意しなければなりません。処方は講習を受けた登録医師が行い、患者さんにも勉強していただく必要があります。これまで蜂に刺されて気分が悪くなった方やひどい食物アレルギーのある方は医療機関での相談をお勧めします。