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タバコの害(2009年9月1日掲載)

伊志嶺 朝彦・中頭病院

明らかな薬物依存

この文章は現在タバコを吸っている方にも読んでもらえるでしょうか。喫煙されている方の場合、まだ禁煙する気持ちがない時期には、禁煙を勧める文章は目に入らないし、怒りさえ覚えるかもしれません。「タバコは個人の嗜好品(しこうひん)なんだから、他人からとやかく言われる筋合いはない」とか、「タバコを吸わない人より多くの税金を払っている」と考えている方もいるかもしれません。一理はありますが、本当にそうでしょうか?

タバコを吸わないとニコチンが血液中から減少し、ニコチンの刺激がなくなるとイライラなどを感じます。そのイライラが喫煙することで消失するため「タバコはイライラを抑えてくれる」と思いがちです。

しかし、そのイライラのない状態とはタバコを吸わない人では通常の状態なのです。通常の状態を保つためにタバコに依存しているわけで、これは明らかな薬物依存であり嗜好品ではありません。

またタバコの値段の60%程度が税金(消費税を含む)で、年間2兆円以上の税金を喫煙者が払っていることになります。

しかし、タバコ関連の疾患は多く、皆さんの税金から捻出(ねんしゅつ)した国民健康保険からのタバコ関連疾患への支出は1兆3000億円以上(1999年)、喫煙関連疾患による労働力損失は5兆円以上(同)といわれています。このように喫煙行為は社会に良い影響はないのです。

喫煙者はタバコの被害者であり、ニコチン依存症のために「タバコは私の必需品である」と思わされているのです。このニコチン依存症は病気であり、治療できます。

禁煙を手助けできる薬剤もガム製剤、はり薬や飲み薬などが出ています。ぜひ、一度お近くの禁煙外来のある病院を受診してみてはいかがでしょうか。きっと医療スタッフが、タバコに縛られない、自由な生活を手に入れるお手伝いをしてくれると思いますよ。