近年、ひざの痛みに悩んでいる方は少なくありません。そのほとんどが中高齢の女性の方に多い変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)ではないでしょうか。今回はその病気によく似た症状の「特発性膝骨壊死(ひざこつえし)」についてお話ししたいと思います。
「特発性膝骨壊死」は変形性膝関節症と症状がとても似ていますが、変形性膝関節症の痛みは少しずつ強くなるのに対して、特発性膝骨壊死の痛みは1〜2日で急激に増強します。痛みが強くなるため足をひきずる、ヒアルロン酸の関節注射を続けていたのに痛みが引かないなどの時はこの病気を考える必要があります。初期はレントゲンでも分かりにくく磁気共鳴画像装置(MRI)という検査が必要です。
特発性膝骨壊死は骨が突然弱くなって、ひざが痛くなりますが、時間の経過とともに骨が回復して痛みが軽くなる病気です。ひざ痛は2カ月から6カ月かけて徐々によくなることが多いですが、たまに痛みが軽減しないこともあります。
治療はひざに負担のかけない治療(免荷(めんか))が必要です。免荷するための道具には、T杖(づえ)や松葉杖があります。また、足底板という靴の中にいれる治療具もあります。足を傾けることでひざの中で内側の負担が減って痛みを軽くする器具です。
最終的に疼痛(とうつう)が強く残ったり、レントゲン上でも骨のへこみが大きかったりする場合、手術が必要となります。手術は人工膝関節全置換術が一般的です。手術では骨の治療ができても弱った筋肉の治療はできません。そこで手術後は筋肉を強くするためにリハビリがとても重要になります。大事なことは特発性膝骨壊死であることを早期に診断し、免荷療法の適応があれば早期に開始することです。
この病気だと分かるまで変形による痛みと思いこみ、痛くてもがんばって歩いてしまう人がいます。無理をすると骨が大きくへこんでしまうことがあるので禁物です。ひざ痛がただの年のせいではないこともあるので、自己診断せずに専門の医師による診察を受けることが大切です。