皆さんやご家族が病院で入院して治療をするように提案を受けたときに、病気に関する心配もあるでしょうが、住み慣れた家を離れることに不安を感じられたことはないでしょうか。また、治療の区切りがついて退院して自宅に戻ることに不安を感じたことがあると思います。
特に高齢の方のお世話をされているご家族は、入院前にできた生活動作ができなくなり、病気の再発の心配や、世話が大変になると思われるでしょう。実際、治れば後遺症もなく元の生活に戻れるという病気より、一生付き合わなければならない慢性の病気が多くなってきています。その上、高齢の方は年齢を重ねられるごとに、介護をする方たちが予想もしなかった、新たな病気のために介護度が次々と上がっていくことが多いものです。
それでも、治すことはできなくても、おうち(家庭)には薬とは違う病気をいやす力があるように思われます。悪性疾患などのために痛みが強い方が家に帰られると必要な痛み止めが半分以下になることもよくあります。厳密な比較研究はありませんが、在宅診療をしている医師の多くが、家におられるほうがよい顔をされ予想より長生きされると感じています。大事な方には住み慣れたところで生きていただきたいですね。
介護や身体的世話のすべてをご家族が負う必要はなく、訪問看護やヘルパーの支援を受けることができます。訪問診療をする医師も増えていますから一人暮らしの方でも在宅療養できるようになりました。夕方や夜にかけて具合が悪くなったらどうしようとの不安には、24時間対応の訪問看護ステーションがあり、夜間対応もする医師が増えて病院に行かなくても対応できることが多くあります。具体的にはかかりつけ医やケアマネジャーにご相談ください。
最後に、認知症のある方の部屋の改造・改築は慣れ親しんだ“おうち”でなくなってしまうことがあるので気をつけてください。