中耳炎には痛いものと、痛くないものがあります。風邪などで鼻水が多くなって、細菌が耳に入ると痛い急性中耳炎になり、炎症で鼓膜が腫れて耳管が狭くなると痛みのない滲出性(しんしゅつせい)中耳炎になります。
風邪や発熱で小児科を受診された子供さんたちが耳鼻科受診を勧められて来院します。耳あかを取って顕微鏡で鼓膜を観察しながら「耳が空気不足になって、鼓膜の膨らみが悪いです」あるいは「耳に水がたまっています」と説明してもすぐには分かりにくいようです。
急性中耳炎は夜泣き、発熱、耳垂れなどの症状を伴うことが多くて、母親も容易に状況がつかめます。その治療は、学会で提唱されている小児急性中耳炎診療ガイドラインに沿って行われています。
滲出性中耳炎は難聴を伴いますが、徐々に進行するためにそれを自覚しないことが多く、気を付けていないと見逃されてしまいます。例えば呼んでもすぐに返事をしない、テレビの音が大きい、テレビに近づいて見るなどの難聴を思わせる様子がありましたら要注意です。
滲出性中耳炎にはガイドラインがまだ提唱されていません。しかし、基本的な治療方針は耳鼻科医の間で、ほぼ一致しています。昨年、長崎の学会でその取り扱いが議論されて、多くの耳鼻科医が以下のような治療方針を立てていることが分かりました。
(1)積極的な治療の対象となる滲出性中耳炎は、滲出液の貯留期間が3カ月以上(2)難聴の訴えが強いときには鼓膜切開をする(3)鼓膜の病的変化が強い場合、鼓膜換気チューブの留置をする(4)鼻副鼻腔炎(びふくびくうえん)合併例に対しては鼻処置、ネブライザーとマクロライド療法(5)アデノイド増殖症合併例では、鼓膜チューブ留置術に加えてアデノイド切除術―
小児滲出性中耳炎はその多くが年齢とともに改善していきますが、将来難聴を残さないように長期の経過観察が必要です。
その原因は耳管周囲の炎症と耳管機能ですから鼻処置、鼻ネブライザー、薬物療法を根気よく続けることが肝要です。頑張ってください。