風邪で咳(せき)が続いたり、大きな声を出しすぎたり、カラオケで長時間歌ったあとなどに、声がかれたことが、皆さんも一度はあるでしょう。
耳鼻科には、こうした声がれ(嗄声(させい))で受診する患者さんがいますが、気をつけないといけない点についてお話します。
声を発生させるところは声帯といい、のど仏の内側に左右一対存在します。発声するときは互いに正中に寄り、細いすき間をつくり、肺からの吐く息によって声帯が振動して声になります。よって声がれの原因として声帯振動が障害されるような声帯自体に病気がある場合と声帯の運動に異常がある場合に分かれます。
声帯自体に病気がある場合としては、声帯結節、声帯ポリープ、ポリープ様声帯、急性喉頭(こうとう)炎、喉頭がんなどがあり、喉頭がんはタバコやお酒の多い人は特に注意が必要です。声帯結節、声帯ポリープはよく声を使う職業(歌手、アナウンサー、学校の先生など)の人に見られやすい病気です。声帯の運動まひが起きているときは、甲状腺腫瘍(しゅよう)、食道腫瘍、肺がん、肺結核、胸部大動脈瘤(だいどうみゃくりゅう)など、声帯とは少し離れた器官が原因のこともありますので、頚部(けいぶ)、胸部のCT検査が必要となります。また、甲状腺機能低下症のように甲状腺ホルモンの低下から声帯が浮腫状に腫れて声がれが起きることもあります。この場合には血液検査が必要です。
いずれにせよ、声がれが持続する場合や血痰(けったん)を伴うときには、必ず耳鼻科で、間接喉頭鏡や喉頭内視鏡検査などで声帯を詳しく調べてもらう必要があります。
治療としては、炎症が強い場合は、消炎剤や抗菌薬が有効ですが、熱いものや刺激物、アルコール、タバコを控えるようにして、さらに声をなるべく出さないこと(声の安静)も大事です。のどの乾燥もよくないので、トローチを服用したり、うがいや部屋の加湿も効果的です。
ガラガラ声、息がもれるようなかすれ声などの症状が1、2週間以上持続している人は近くの耳鼻科で相談されてみてはいかがでしょうか。