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乳がん(2009年5月26日掲載)

宮良 球一郎・宮良クリニック

医療連携で死亡率減

ウチナーユーからアメリカユーそしてヤマトゥヌユーと急激な生活環境の変化も一因となり沖縄の乳がん患者数は急激に増加し、しかも他県を追い抜き乳がん死亡率も上昇していきました。しかし、最近沖縄が全国でもっとも死亡率の少ない県に変貌(へんぼう)したのです。

知ってましたか。

乳がん大国アメリカでもかつて乳がん死亡率が上昇の一途でしたが、ある時を境に減少に転じました。正しい乳がん検診と証拠に基づいた治療に切り替えたからです。

日本でも触診単独検診は無意味だと気付き、早期発見に威力を発するマンモグラフィーやエコー(超音波)検診が乳がん検診の主流となり、乳がんを専門にする施設も全国に増えていきました。もちろん沖縄も例外ではありません。

ではなぜ沖縄の乳がん患者さんがさらに長生きしたのでしょう。答えの一つが地域完結型チームワーク医療ではないかと考えています。チーム医療を簡単に説明しますと患者さんと主治医が固い絆(きずな)で結ばれながら医療スタッフや病院・クリニックそして乳がん患者会と連携し「みんなであなたを見守っているから安心してね」という医療です。

一般外科医が片手間で乳がん診療をする時代は終わりました。さらに、われわれ乳がん専門医だけで乳がんを治療する時代も終わりを告げようとしています。そこで患者さんのあらゆるニーズに応えるため、病院やクリニックが連携しそれぞれの専門職が病医院の垣根を越えチームワークを組んでより良い医療を目指し活動してきました。また県外から乳がん専門医を招き何度も研究会、勉強会を開催し乳腺診療にかかわっている多くの医療関係者がスキルアップを図っています。

そういった一つ一つの積み重ねで乳がん死亡率が全国一低いという結果をもたらしたのではないかと考えています。沖縄は本土から遠く離れた島国です。島全体が一つとなり地域完結型乳がんチームワーク医療をさらに発展させれば、ますます乳がん死亡率は下がるのではと期待しています。

ただし、県内の女性がちゃんと正しい乳がん検診を受けることが最低条件ですが。