沖縄県医師会 > 健康の話 > ドクターのゆんたくひんたく > ドクターのゆんたくひんたく2009年掲載分 > 県内のロタウイルス胃腸炎

県内のロタウイルス胃腸炎(2009年3月31日掲載)

石田 眞一・沖縄セントラル病院

2−5月に患者多い

下痢はよく見られる病気ですが、ウイルスが原因の一つと知られるようになったのは、ノロウイルスの集団感染が報道されてからだと思います。

ノロウイルスと同様、「ロタウイルス」は小腸に感染して下痢、嘔吐(おうと)、発熱を起こします。まれに脳炎、脳症の報告もあります。

発症すると下痢で水分が失われ、嘔吐のため水分補給ができず脱水になります。特に二歳以下の乳幼児にとっては危険な場合があり、開発途上国では乳幼児死亡の大きな原因です。

日本や欧米などの温帯では冬に流行しますが、熱帯では一年中見られます。気候とウイルスの流行には関連性があります。

数年前から県内では夏にインフルエンザが流行しています。またRSウイルスという子どもに肺炎を起こすウイルスは、他県では冬に流行しますが、県内では夏に流行することが最近分かりました。

私たちは二〇〇七年から〇八年にかけ、浦添市の小児科医院の協力で五歳以下の下痢症患者でロタウイルスの検査をしました。

その結果、ほとんどの患者は(五十四例中五十二例)、二月から五月に発症していました。沖縄本島でもロタウイルス胃腸炎は季節性があり、他県と比べ冬より春に多いようです。

沖縄は、かつて琉球王国という独立国でした。民族的には同じでも、自然環境は他県とは異なります。ロタウイルス胃腸炎の性格も、ほかとは違うかもしれません。

乳幼児は、具合の悪いことを訴えられません。水も飲めない時は、近くの小児科に相談してください。

近年開発されたロタウイルスワクチンの治験が、日本でも始まりました。死亡の少ない欧米でも使用されるのは、ワクチンを使う方が社会の利益になるからです。小児科医の負担を軽減し、医療費だけでなく、親が仕事を休む社会的損失も抑えます。このワクチンが日本でも認可されることを期待します。