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腰部脊柱管狭窄症(2009年2月23日掲載)

宮里 剛成・大浜第一病院

神経圧迫され立てず

皆さんは腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)という病気をご存じでしょうか。タレントの、みのもんたさんを苦しめたことで一躍脚光を浴びた病気です。この病気は中年以降に発症し、神経の入れ物である脊柱管が年を取ることによって狭くなり、その中を通る神経が圧迫されることで起こります。

その特徴によって「馬尾(ばび)型」「神経根(しんけいこん)型」「混合型」の3タイプに分けられます。「馬尾型」は足に力が入らなくなり、立位や歩行が制限されてくるのが特徴です。

一方で「神経根型」は、神経に沿って、おしりから足への痛みやしびれが起こります。坐骨(ざこつ)神経痛といった方がなじみ深いかもしれません。「混合型」は両方の症状を併せ持ったものをいいますが、座ると症状が軽く、歩くと症状が強くなるのが特徴です。

これらの疾患のことがよく分からなかったころ、患者さんは周囲から怠け者だと勘違いされていました。座っていると多弁で元気なお年寄りが、さあ作業を開始するぞと立ち上がった瞬間、「アガー(痛い)! 立てない」というのですから、周りからみると、あからさまな演技をしているように映ったのかもしれません。

治療はまず、手術をしない保存的治療を行います。痛み止め(内服、坐薬(ざやく)等)や筋肉を和らげる薬、血の循環をよくする薬等の処方、また、希望者にはリハビリ治療(ホットパック、牽引(けんいん)、電気治療等)も併用します。痛みが持続する場合は、お尻の近くから神経の周りに薬を浸潤させる「仙骨ブロック」を行います。

それでも効果がない場合は、神経の枝(神経根)へ直接針を刺す「神経根ブロック」を行います。これは痛みの原因となる部位を明らかにし、強い痛みを取り除くことができます。それでもよくならなければ、手術しか残されていません。しかしご安心ください。手術は年々進歩しています。手術の創(きず)は小さくなり、手術後の安静期間は短くなりました。

例えば、1カ所の手術では、創は10センチ近くから約2センチへ、退院までの期間も4週間以上から2〜3週間へと短縮されました。手術成績がよくなったので「手術をすると足が動かなくなるよ」といったうわさは過去の話となりました。

坐骨神経痛は60歳以上の方に多い病気です。気になる方は、一度近くの整形外科クリニックを受診してみてはいかがでしょうか。