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病的賭博(2009年1月26日掲載)

稲田 隆司・かいクリニック

コントロール利かず進行

カジノの弊害としてよく挙げられるギャンブル依存症(病的賭博)について記してみます。この病気は、例えばアメリカ精神医学会の診断基準(DSM―IV―R、精神疾患の診断・統計マニュアル、新訂版、医学書院)によれば次の様に定められます。(一部省略)

(1)賭博にとらわれている(2)興奮を得たいがために、賭け金の額を増やして賭博をしたい欲求(3)賭博をするのを抑える、減らす、やめるなどの努力を繰り返し、成功しなかったことがある(4)賭博をするのを減らしたり、またはやめたりすると落ち着かなくなる。またはいらだつ(5)問題から逃避する手段として、または不快な気分(無気力、罪悪感、不安、抑うつなど)を解消する手段として賭博をする(6)賭博で金をすった後は、別の日にそれを取り戻しに帰ってくることが多い(失った金を“深追いする”)(7)賭博へののめり込みを隠すために、家族、治療者、またはそれ以外の人に嘘(うそ)をつく(8)賭博の資金を得るために、偽造、詐欺、窃盗、横領などの非合法的行為に手を染めたことがある(9)賭博のために、重要な人間関係、仕事、教育、または職業上の機会を危険にさらし、または失ったことがある(10)賭博によって引き起こされた絶望的な経済状態を免れるために、他人に金を出してくれるよう頼る。

病的賭博は、これらのうち5つ(またはそれ以上)によって示される持続的で反復的な不適応的賭博行為とされています。賭博に対するコントロールが利かず、病気が進行し、生活が賭博中心となり、経済的破綻(はたん)、一家崩壊、失職等とさまざまに不利益が生じます。抑うつが合併することも多く、琉大医学部精神衛生学教室の調査では、病的賭博が進行すれば抑うつも合併し易(やす)いという結果が出ました。このことはギャンブルにはまり、うつも重なり追い込まれるという、自殺促進因子としての病的賭博のリスクを示唆するものです。

本人はもとより、家族の悩みも深く、本人の借金の肩代わり(立ち直るための良い方法ではありません)をしたり、虚言に振り回され、「こんな人ではなかった。今度こそはやめると約束したのに…」と涙し、不眠や抑うつを呈する事もしばしばです。

病的賭博は本人から誠実さや判断力を奪い、周囲を巻き込む病といえます。とはいえ、回復も可能な病気で、自助グループや治療共同体、電話相談機関、医療機関での服薬、カウンセリング等の活用が有効です。県立総合精神保健福祉センター098(888)1443までお問い合わせください。