沖縄県医師会 > 健康の話 > うちなー健康歳時記 > うちなー健康歳時記2008年掲載分 > “かくれ腎臓病”

“かくれ腎臓病”(2008年12月22日掲載)

古波蔵 健太郎・琉球大学医学部附属病院

症状なく、発見遅れも

腎臓の働きが著しく低下して末期腎不全の状態になり透析治療を受けている患者さんは、現在、全国で27万人いて年々増加しています。腎不全の原因はさまざまですが、病院を受診した段階で手遅れのケースも多く存在します。

将来透析になるような腎臓の病気というと、具合がとても悪い様子を想像しがちですが、実際は病気がかなり進行するまで症状がないことが多く、発見が遅れる原因にもなっています。本人が気付いていないという点で“かくれ腎臓病”と呼べるかもしれません。専門的には慢性腎臓病と呼んでいますが、最近、一般のお医者さんの間でも注目されています。

慢性腎臓病は新たに発見された特別な病気ではなく原因を問わず、蛋白尿のように腎臓に病気がある兆候や腎臓の機能が低下している状態が3カ月以上持続している場合につけられる病名です。

診断はいたって簡単で検尿と採血ですぐ分かります。例えば尿タンパクや尿潜血が続けて陽性である場合や、採血でクレアチニン(血液の汚れの指標の一つ)の数値が基準値より上昇がみられる場合(最近はクレアチニンの数値から腎臓の働きを表すeGFRを計算して60を下回っていないか確認)は慢性腎臓病と診断されます。

腎臓の病気は特殊な病気と思われていましたが、慢性腎臓病の患者は全国で1300万人近く存在していて、ごくありふれた病気であることが分かりました。近年、糖尿病や高血圧による腎不全が増えてきたことや平均寿命が伸びていることなどが関係していると考えられます。

また、この病気が注目を集めているもう一つの理由に、慢性腎臓病の患者さんに心臓病や脳卒中が多いことが挙げられます。最近、何かと話題のメタボリックシンドロームとこの点で同様だといえますが、慢性腎臓病の患者のリスクはそれよりも何倍も高い事が明らかになっています。

したがって慢性腎臓病の治療では、高血圧や糖尿病、肥満などがある場合、それらの治療を総合的かつ徹底して行うことが重要です。治療の進歩によって腎臓病の進行抑制のみならず、腎臓病で最も多いIgA腎症の場合は早期治療によりほとんど完治できる例も多くなりました。

このように考えてみると無症状だから安心ではなく、むしろ無症状だからこそ健診などを積極的に受けて、“かくれ腎臓病”を早く見つけて治療を始めることが重要だといえます。