もしも何らかの病気で、(例えば、脳卒中など)自力で口から食べ物を食べられなくなった場合には、経鼻経管栄養といって、鼻から細い管を入れて、栄養剤を注入する方法があります。腸管を使って栄養吸収することができるため、経静脈栄養(いわゆる点滴)よりも、敗血症などの合併症が少なくなるといわれています。しかし、鼻から管を入れているために、本人も周りのご家族も負担に感じることが少なくないようです。
そこで、おなかから直接胃に穴を開けて、胃内に栄養チューブを入れる「胃瘻(いろう)」という方法が開発されてきました。従来は外科手術により行われていましたが、近年は内視鏡(胃カメラ)による経皮内視鏡的胃瘻造設術が行われるようになってきました。この経皮内視鏡的胃瘻造設術は手技名の英語の頭文字を取って、PEG(ペグ)と呼ばれています。PEGは、胃カメラ検査の延長のような感じで受けることができます。所要時間はおおよそ30―40分程度です。
PEGの方法には数種類ありますが、最近ではイントロデューサー法が広く用いられています。この方法は、おなかの壁と胃の壁を縫い合わせたところへ、胃瘻用の針を刺して胃に穴を開けて、栄養チューブを入れます。順調にいけば、翌日から栄養剤を注入できるようになり、7―10日間くらいで縫い合わせた糸が取れます。その後はチューブの種類によって、1―4カ月ごとにチューブを交換していきます。
チューブの型によっては邪魔にならないように、おなかの外に出る部分が短いものや、長い期間チューブが入れておけるよう先端の形が工夫されたものなど、さまざまな種類のものがあります。PEGを受けた本人やご家族の希望によって、チューブの形を選べるようになってきました。
しかし、残念ながら合併症が起きてしまう場合もあります。例えば、PEG施行時の合併症としては、肺炎や腹膜炎などの感染症や出血、胃が破けて穴が開いてしまうことなどが稀(まれ)に認められます。またPEG後しばらくしてから、胃瘻周囲の皮膚炎、炎症や潰瘍(かいよう)などが起きることもあります。重症なものになると、外科的な処置・治療が必要になる場合もあります。
こうした危険性があるとはいえ、胃カメラ検査を受けられるような全身状態であれば、PEGの検討は可能と思われます。その十分な条件や可能性を、最寄りの主治医に一度ご相談してみてはいかがでしょうか。