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新しい禁煙治療薬(2008年12月8日掲載)

久場 睦夫・国立病院機構沖縄病院

保険適用が可能

喫煙は、いうまでもなく様々な疾患を引き起こします。まず、現在わが国における死亡原因第1位のがんの発生率を高めます。それに気管支炎・肺気腫といった慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)による死亡が2〜5倍、心臓・血管系による死亡が1・7倍となり、全死因で1・3倍高くなります。

がん死亡の中でもトップは肺がんですが、その原因は90%が喫煙もしくは受動喫煙によるものと国際肺癌学会が声明を出しております。

がんをはじめ、呼吸器疾患、心臓疾患等にかからないためには禁煙が大変重要です。しかしひとたび喫煙習慣がつくと、タバコを断つ事はなかなか容易ではありません。これはタバコに含まれるニコチンのせいです。

禁煙対策の遅れているわが国でも、喫煙習慣はニコチン依存症という病気とみなされ、平成18年6月から禁煙治療が保険適用となっている事は周知の通りです。自己流で禁煙するより「禁煙外来」で専門医の助言や禁煙補助薬を利用する方が、より確実に禁煙を成就できます。

禁煙治療はこれまでニコチンパッチおよびニコチンガムが用いられてきましたが、さらなる効果的な薬として今年6月からニコチン拮抗(きっこう)作用を有する経口薬が登場しています。

これまでのニコチン製剤と作用機序が異なり、より進化した禁煙治療薬とされています。ニコチンパッチやニコチンガムがニコチン補充をしながら禁煙に持っていくという、いわばニコチン漸減法であるのに対し、ニコチン拮抗薬は脳の中のニコチン受容体に結合し「タバコを吸いたい」という欲求を抑え、また喫煙した時にニコチンがニコチン受容体に結合する事を阻害し「タバコがおいしい」という満足感を抑える(タバコがおいしくなくなる)という2通りの作用で、より禁煙し易(やす)くなる、とされています。

欧米では2年程前から用いられ、ニコチン製剤より、約2倍禁煙率が上がったとの報告があります。また、ニコチンを含まない事で、狭心症や心筋梗塞(こうそく)等の心臓疾患や脳血管障害を持つ方にも心配なく使用できます。服用期間は原則12週間ですが、さらに12週間続ける事も可能です。

副作用は吐き気、頭痛、便秘等ですが、概して軽度でほとんどの方が継続可能です。この薬の普及により、禁煙の一層の広がりが期待されます。

もちろん、ニコチンパッチは吐き気や頭痛等の副作用は無く、ニコチンガムは喫煙欲求時に迅速に対応できる等、特有の利点があります。どの様な治療法で禁煙していくかは「禁煙外来」の主治医とよく相談される事が肝要です。

いずれにせよ、喫煙されている方は是非禁煙に踏み切りましょう! そして御本人はもとより周辺の方々の健康を守りましょう!