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医療とインターネット(2008年11月24日掲載)

伊良波 史朗・県立南部医療センター・こども医療センター

治療方法など情報多く

最近、診察をしていると以前にもまして遭遇するのが、患者さんに「インターネットで調べたらこんなこと書いてあったけど、これは先生のところではできるの?」等々といった件。ほほ笑ましい質問から答えるのに困るほど高度な医療の質問、はたまた患者さんが勘違いして聞いてくるピントのズレた質問など、いろいろとあります。

私の診療科目は放射線治療で、がんの治療が主な仕事となります。おそらく一般の方にお話しするとき、医療従事者ですら仕事内容を的確に説明するのが難しい診療科の1つと思われます。そんな状況の中で、患者さんがインターネットで調べてきた質問を投げ掛けられると、その返事に困り果てたり考えさせられたりすることが多々あります。

とあるご高齢の患者さん。放射線治療をインターネットで調べたら「放射線治療って原子核使って、光線出して治療するんだろう。そんなもので、治るの?」といった質問。日常的に診療している者としてはピントがズレているように思える反面、確信を突かれて、なかなか返答に困る質問です。一般的な放射線治療のお話をしたところ「じゃあ、大丈夫か」とすぐに私の分かりづらい説明に納得されたご様子。あまりにも簡単に納得されたので不思議で仕方が無く、どのように調べたのか尋ねたところ“原子力”と“放射線治療”という言葉でネット検索を行ったとのことでした。

気になったので、自分でも同じキーワードをインターネットで入力してみると、最初にヒットしたのは医療機関や病院ではなく、原子力研究機関でした。原子力の使い方を医療用、工業用、研究用、電力エネルギー用と項目別に掲載しているページを発見。その中の医療用の項目で、放射線治療の話が簡単に分かりやすく記載されており、きれいなイラストまで付いていました。これを踏まえた上で、私の分かりにくい放射線治療の説明をこの患者さんが納得し理解できたのだろうと感心したことがありました。

数年前までは、病院や薬などの情報を個人で入手することは難しかったと思われますが、インターネットが普及した現在、容易になったと思われます。間違った情報も数多くあると思われますがその反面、有益な情報もたくさんあり、使う人の状況や状態で有利にも不利にも働くものと思われます。

インターネットに振り回されずに、上手に利用したいものです。