沖縄県医師会 > 健康の話 > うちなー健康歳時記 > うちなー健康歳時記2008年掲載分 > 子どもの難聴

子どもの難聴(2008年10月27日掲載)

我那覇章(琉球大学医学部付属病院)

発見、対策は早めに

補聴器、人工内耳の使用を

私たちは普段、言葉を通して意思を伝え合って生活しています。では私たちはどのように言葉を話せるようになるのでしょうか。

ヒトはおなかの中にいるときから周りの音や言葉を聞いています。何でもないようですが聞くということはとても大切で、音や言葉を聞くことによって言葉に関連した脳が発達し、言葉による会話をできるようになります。音を感じる脳は四〜五歳頃までにほぼ完成し、その後は大きな変化をしなくなります。このため四歳頃までに十分に音や言葉を聞いていないと、トレーニングをしても言葉を話すことが難しくなります。ですから、子どもの難聴では聞こえの程度に応じて早期の対応が必要です。

難聴の子どもを早く発見するために新生児聴覚スクリーニングや一歳六カ月健診、三歳児健診などが行われています。新生児聴覚スクリーニングは生後すぐに子どもの耳が聞こえているかどうかを調べる検査です。難聴の可能性ありと判定されれば耳鼻咽喉(いんこう)科でさらに詳しく調べます。健診では問診や診察を行って難聴の可能性を判断しています。

難聴の診断には家庭での様子も参考になります。乳幼児では、大きな音を聞くとびっくりしたり、音のする方を向いたりします。一歳前後では、「ママ」や「ブーブー」等、意味のある言葉を、二歳過ぎたころからは「どこ行く?」や「ママバイバイ」など二つの単語をつなげて話す二語文を話すようになります。

このような音に対する反応や、言語発達がない場合は難聴の可能性があります。難聴への対応は原因や程度によって違います。治療をしても良くならない場合には、聞こえを補うことが必要になります。中等度の難聴では補聴器が有効です。早期に補聴器を使ってトレーニングを始めるほど言葉の発達が良好なのでできるだけ早く補聴器を使うことが勧められます。

補聴器を使っても十分聞こえない高度難聴には人工内耳という方法もあります。人工内耳は音を感じる細胞の代わりをする機械を体内に埋め込み聞こえを獲得するものです。最近は一歳六カ月から人工内耳手術が可能になっています。九州地方では、沖縄県が最も早くこの治療を導入し成果をあげてきました。今では人工内耳を使って普通小学校に通学できる先天性の高度難聴児も多くみられるようになっています。

聴覚障害者への福祉は十分でなく、言葉で他人との意思疎通ができなければ社会生活に大きな支障がでてしまいます。難聴を疑う場合には、ぜひお近くの耳鼻咽喉科にご相談いただきたいと思います。